株式公開価格、透明化を
SmartTimes セントリス・コーポレートアドバイザリー代表取締役 谷間真氏

コラム(ビジネス)
2019/10/28付
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新規株式公開(IPO)時における公開価格はどのように決定されるのだろうか。主幹事証券会社は原則として上場申請企業の予想純利益に類似上場企業のPER(株価収益率)を乗じて株式市場におけるフェアバリューを計算し、IPOディスカウントをした上で想定価格を決定する。

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開

この想定価格の妥当性は機関投資家へのロードショーで評価され、投資家からのアンケート結果によって仮条件が決定される。さらにブックビルディングにおける投資家の需要の状況によって最終的な公開価格が決定されるというプロセスをたどることとなる。

新規上場企業はバリュエーションの前提となった業績予想を根拠とともに開示することで株式市場への責任を負うこととなる。この業績予想は主幹事証券会社や証券取引所の詳細な審査を受けるだけでなく、審査期間中に月次進捗のモニタリングを受け、乖離(かいり)が発生すればIPOスケジュールが延期となる。一般投資家を募集する株価決定で、このような審査を経た予想利益にPERを乗じたバリュエーションには一定の納得感がある。

一方で、2019年では10月11日現在、上場または上昇承認を受けた63社のうち13社、約2割の新規上場企業では、異なる株価算定をしていると思われる。これらの企業は予想利益が赤字または予想利益をベースとしたPERが非常に高く評価されているからだ。

バリュエーション方法は開示されていないが、おそらく申請期の予想利益ではなく、申請翌期またはさらに先の予想利益にPERを乗じて算定する方法や、将来にわたり獲得が期待されるキャッシュフローから算定するDCF法などが採用されているのだろう。

東証マザーズでは将来性が非常に高いベンチャー企業であれば赤字または十分な利益を上げていなくても、資金調達を目的としたIPOは大賛成だ。しかし主幹事証券会社がテクノロジーやビジネスモデルを高く評価し、例外的に将来収益を用いたバリュエーションを実施するなら、責任をもって中期的な業績予想を開示し、バリュエーションの根拠を透明化すべきだ。これら企業のバリュエーションは原則的なIPOの株価決定プロセスと比較しても、あまりにも不透明で不明確と言わざるをえない。

19年に例外的なバリュエーションをしていると思われる13社のうち9社は公募による資金調達より売り出しの方が多く、創業者やベンチャーキャピタルなどのエグジットにIPOが利用されているのが実情だ。

企業経営の実態とバリュエーションが乖離しているベンチャーバブルはいつ弾けるかわからない。主幹事証券会社は情報格差のある一般投資家に対し、株価決定について透明かつわかりやすい説明を実施して、信頼に値する健全なIPOを実施してほしい。

[日経産業新聞2019年10月28日付]

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