業務効率化 日本は未開拓
SmartTimes グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一氏

コラム(ビジネス)
2019/10/25付
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新たな成長産業の育成のためにはグローバル展開し、そこで勝つことが必須だと思い込みがちだ。もちろんそれは産業の成長の一つの形だが、決してそれに限定されるわけではない。日本国内に目を向けても依然として大きく、しかも効率化の余地が大きい手つかずの市場が残っている。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

筆者は先日、グローバルでトップベンチャーキャピタルの一つであるセコイア・キャピタルの中国のパートナー(共同経営者)と対談した。印象に残ったのが、セコイアは今まで日本のスタートアップに投資したことがなく、大きく興味をよせたこともなかったが、今は日本のスタートアップに熱視線を送っているということだ。日本のスタートアップエコシステムが発展し、数千億円規模のセコイアのファンドに十分にインパクトがあるような投資リターンを生み出す企業が生まれる土壌が整ってきたとみているということだ。

次に、日本でどのような投資テーマ、スタートアップに興味をもっているのか聞いた際の回答だ。

グローバルな投資家ということで「日本から世界にはばたくポテンシャルのあるスタートアップ」との答えを予測していた。しかし「日本の大きな国内市場で勝ち切れるエンタープライズソリューション(企業向けのサービス)のスタートアップに注目している」との回答が返ってきた。日本の企業向けのサービスは国内市場が十分に大きい一方で他国と比べ競争が激しくないので、中国など世界の投資機会と並べても十分に魅力的というわけだ。

ITは1990年代後半には技術としての新規性を背景に、テクノロジーベースの新産業として勃興した。2010年代も後半に入るとIT産業は完全にテクノロジー産業から、こなれてきた技術を使いこなしビジネスモデルで勝負するサービス産業へ変容した。

このようにIT産業は成熟化する一方、IT技術そのものは他の産業へ染み出し、全ての産業のインフラと化している。非効率な産業では「デジタルトランスフォメーション(デジタル化による変革)」がキーワードとなり、同時にスタートアップの大きな事業機会となっている。

例えばカケハシは調剤薬局向けに電子薬歴システムを提供し、薬剤師の服薬指導や薬歴管理を容易にしている。オクトは建設業界にスマートフォンで使える現場のプロジェクト管理、職人のコミュニケーションシステムを提供している。

少子高齢化や労働人口の減少、社会保障改革の必要性などマクロトレンドからみても古い産業の変革の必要性は高まっている。スタートアップがITを使いこなしエンタープライズソリューションを既存企業に提供し、効率化や付加価値の向上を支援することで、既存のプレーヤーと共存する形で、旧態依然とした産業の変革が進むだろう。

[日経産業新聞2019年10月25日付]

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