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本業で社会を良くする企業 クチコミ応援、SNSで広がる

奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

NIKKEI MJ

9日、現代マーケティングの父として知られるフィリップ・コトラー教授が携わる「ワールドマーケティングサミット東京」が今年も開催された。コトラー教授が基調講演で例年以上に強調していたのは、「ビジネスは社会を助けなければいけない」というメッセージだった。

コトラー教授の言葉を借りると、古いモデルのビジネスは株主の利益を最大化するもの。これからは新しいモデルのビジネスとして、株主だけでなく顧客、従業員、地域、国際社会など、全てのステークホルダーに利益を還元するよう目指すことが求められると訴えていた。

「企業の社会貢献」というと、利益の一部を慈善団体や植林などに使う形を想像する人が多いと思う。一方、ネットで企業の行いが全て可視化された現在では、企業が社会の問題に行動して立ち向かう「ブランドアクティビズム」の姿勢こそがマーケティングでも重要になるというのだ。

コトラー教授は登壇に際し、SDGsのピンバッジをしていた。SDGsが掲げる17のゴールに企業がいかに取り組むか、というのが分かりやすい例だろう。

スターバックスなどの飲食店はいちはやくプラスチックストローを紙のストローに替え、プラスチックゴミの問題を放置しない姿勢を示している。社会を良くするための行動のひとつと言える。

日本でも、コーンや枝豆などをペースト状にして皮や芯までまるごと全部食べられるようにする「ZENB」というプロジェクトにより、ミツカンが食糧問題の解決に貢献しようとしている。KLMオランダ航空は短距離の移動であれば「飛行機の代わりに電車で移動できませんか?」と自己否定にも見えかねない意見広告を展開し、話題になった。

利益を本業と関係ない分野に単に寄付するのではない。本業そのもので社会を良くすることに貢献したり、本業が生み出す問題を最小にしたりする努力をすることがポイントと言えるだろう。

こうした社会貢献は企業にとって負担だと考える人も多いかもしれない。実はソーシャルメディア時代には、そうして愛されるブランドになれば、企業の存在意義も増し消費者がクチコミで応援してくれる。だからマーケティングとしての投資対効果も高くなる、というのがコトラー教授の提言の注目点だ。

P&Gのヘアケアブランドであるパンテーンは、学生や就活生が直面する同調圧力に対して、「#この髪どうしてダメですか」や「#令和の就活ヘアをもっと自由に」など、多様性を社会全体で認めようという問題を提起した。SNSを中心に大きな議論を巻き起こし、社会の空気を変えただけでなく売り上げをV字回復させた。

そもそも、日本でも「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の近江商人の「三方良し」の哲学が多くの経営者の間に浸透していたはずだ。「世間良し」は企業のオフィスがある地域をイメージすることが多かったかもしれないが、世界や地球環境自体を広く「世間」と捉えることが、これからの企業経営者には求められている。

[日経MJ2019年10月25日付]

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