春秋

春秋
2019/10/23付
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東京の大動脈である環状7号線の地下約50メートルの空間に、内径12メートル超の巨大トンネルがあるのをご存じだろうか。過去、はんらんを繰り返した神田川などの水の逃げ場として整備工事が進む防災目的の地下調整池である。台風や集中豪雨の際に、その機能を発揮している。

▼今から15年前。当時、皇太子だった天皇陛下は、調整池の内部を視察された。英オックスフォード大などで水上交通史を修めた後、関心の領域を「水と世界の環境問題」に広げられた陛下の希望であった。トンネルの天井を見上げながら、「どのくらいの量の水が入るのですか」などと都の担当者に熱心に質問されていた。

▼きのう、皇居・宮殿で「即位礼正殿の儀」を取材していて、当時の記憶がよみがえった。あまたの河川決壊をもたらした台風19号の傷が癒えない。被災者は、浸水した自宅の片付けなどに追われ、警察や消防は行方不明者の捜索に尽力する。政府は予定していた祝賀パレードを延期した。陛下のお気持ちに沿う判断だろう。

▼「(水害などで)最も大きく影響を受けるのは、女性や子供、お年寄りや障害のある人たちなど、いわゆる社会的に弱い立場にある人々です」。陛下は昨年、「世界水フォーラム」の講演で、こう述べられた。台風19号の犠牲者の多くは60歳以上だった。さぞご心痛だろう。パレードなき即位礼に、令和の象徴像を感じた。

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