春秋

2019/10/22付
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旧日本軍の「大本営発表」はフェイクニュースの元祖だろう。敵機多数撃墜、わが方の損害軽微なりといった常套(じょうとう)句の多くがウソだった。その始まりは1942年6月のミッドウェー海戦だといわれる。空母を4隻失ったのに「1隻喪失、1隻大破」などと言い募った。

▼真珠湾攻撃からまだ半年、勝った勝ったの世論が高ぶっていたころだ。いまでは太平洋戦争の大きな転換点として知られるが、当時の国民は発表を信じ、破滅への道を歩んでいった。このとき沈んだ空母のうち「加賀」らしき船体が北太平洋の現場付近で見つかったという。僚艦の「赤城」とみられる影も発見したそうだ。

▼これまでも戦艦「武蔵」や「比叡」を確認してきた米調査チームの成果である。マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレン氏設立の財団が豊富な資金を出しているが、歴史と向き合う意識なくして続けられる仕事ではない。77年ぶりに姿を現した「加賀」とみられる艦の映像は、あの戦争の悲惨をまざまざと甦(よみがえ)らせる。

▼フェイクを流しつづけた軍部。世界を知らずに熱狂した人々。こういう機会に過去に目を向け、未来への教訓を胸に刻みたい。きょうは天皇陛下の「即位の礼」が執り行われる日だ。令和新時代が本格スタートするとともに平成が遠のき、昭和がかなたに去る。それでも、いやそれだからこそ、忘れてはならぬことがある。

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