春秋

2019/10/19付
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午前3時半。眠い目をこすりつつ約束の場所に向かう。北海道根室市の花咲港。サンマの水揚げを見るためだ。岸壁に着くと、船に搭載した集魚用の明かりがこうこうと輝くなか、銀色の魚体が大きな網で次々とトラックに移されていく。おこぼれを狙って海鳥が騒ぐ。

▼しかし、働く人たちの表情はどこかかげっている。記録的不漁で始まった今季。10月に入りまとまった漁はあったものの、トータルでみると昨年の1割強。天災級の事態という。魚群を追って、例年より遠い漁場へ出て船が転覆、乗組員らが犠牲になる悲劇も起きた。サンマだけではない。スルメイカも食卓から遠ざかる。

▼イカの漁獲も9年前の20万トンが昨年は4分の1ほど。値もグンと上がっている。コンビニのあたりめやスーパーの塩辛の量が年々減っていく感じがするわけだ。殿様が「サンマは目黒に限る」とうなずく落語のオチも、●(歌記号)肴(さかな)はあぶったイカでいい、と歌う八代亜紀さんの叙情も、理解できなくなる日が近く来るかもしれぬ。

▼不漁の原因は海水温の上昇やら海流の変化など、さまざまに取りざたされる。大型船を仕立てて、大量に捕っていく周辺諸国もその1つに数えられよう。環境の変化や競争の激化に応じた改革を、我が魚食の民はなし遂げられるか。●(歌記号)あれからニシンはどこへ行ったやら。ニシンの代わりにいろんな魚が入っては困るのだ。

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