レトロ銀幕 湯の街に情緒 別府ブルーバード劇場(大分県別府市)
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コラム(ビジネス)
2019/10/21付
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NIKKEI MJ

九州屈指の温泉地、大分県別府市に70周年を迎えた映画館がある。「別府ブルーバード劇場」だ。今年米寿の館長、岡村照さんがチケットのもぎりから映写室の管理までをこなす。独自で映画祭を開くなどユニークな取り組みもあり、全国からファンが集まる。

岡村さん(左)と森田さんの知恵で偏りのない作品を上映する

岡村さん(左)と森田さんの知恵で偏りのない作品を上映する

「幸福の黄色いハンカチ」「嵐を呼ぶ男」「大脱走」。往年の名作の絵看板が並ぶ同館は別府駅から徒歩数分の場所にある。上映中の作品の音楽がうっすらと漏れ聞こえる館内に入ると、ほの暗い照明の中に渥美清さんや吉永小百合さんの写真が。同館を訪れた時の写真だ。

「『名画座ですか』と訪ねてくるお客さんに映写室をお見せすると喜ばれるんですよ」と岡村さん。ラグビーW杯や湯治目的で別府を訪れる訪日客の来訪がうれしそうだ。岡村さんの父、中村弁助さんが1949年に始めた映画館は、今では温泉街の観光名所だ。「白雪姫」の上映から始まりウエスタン、日活、松竹と上映作品を変えながら別府市に寄り添い続けてきた。

人気の秘密は懐かしさだけではない。2週に1度、上映する5作品を全て入れ替える。作品選びを手伝うのは、映画ライターの森田真帆さん(39)。森田さんが選んだ作品を試写し、次女の実紀さん(59)も交えた話し合いで絞り込む。

3人の年齢や好みが異なるのが、偏りなく選べる秘訣だ。九州では唯一の上映館となる作品も多い。観客は福岡や東京からも集まる。映画を見たついでに温泉に立ち寄る人も多い。

17年から独自の映画祭「Beppuブルーバード映画祭」を秋に開いている。短編作品も合わせ、3日間の上映作品は30~40ほど。毎年多くの監督が訪れ、今年は白石和彌監督や俳優の阿部サダヲさんが登壇する予定だ。昨年からはクラウドファンディングで資金を集め、映画ファンと制作者がともに作る映画祭となっている。

「大型の映画館が大分市などに進出してからは、観客が数人という日もある。それでも続けてきたのは映画が好きだから」と岡村さんは命ある限り映画館を続けていきたい考えだ。「子どもたちに夢を与えたい」との先代の思いから始まった同館。温泉地だけではない、別府の魅力を伝えている。

(西部支社 荒木望)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年10月21日付]

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