春秋

春秋
2019/10/18付
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むかしの売れっ子作家はいろいろミスをしたらしい。海辺の町のはずが高原の風景を描いたり、季節がいつの間にか変わったり。某先生は死んだ人物を出して読者に指摘され、慌てず騒がず辻つまを合わせたという。人間のつくる物語はかくもご都合主義に満ちている。

▼東京五輪・パラリンピックのドラマも似たようなものだろう。国際オリンピック委員会(IOC)が五輪マラソンと競歩を札幌へ移すと言い出した。米テレビ局の意向もあってか真夏の開催を求めたのはIOCである。なのに中東ドーハでの世界陸上の混乱を見て暑熱がいよいよ心配になり、辻つま合わせを始めたようだ。

▼開幕まで300日もない土壇場で、この花形競技の場所変更とはご都合主義の極み――とは思うが非難ばかりはできまい。かつて招致委員会は立候補ファイルに「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖である」などと書いてレースを乗り切った。うまいことを言ったのはいいが、暑さ問題はずっと影を落としている。

▼古代ギリシャの劇には、収拾がつかなくなると「デウス・エクス・マキナ」なる神が出てきて大団円という手法があった。IOCがこの役を演じ、とにかく選手ファーストで札幌マラソン・競歩が実現するならご都合主義もよしとしておこう。しかし待てよ、それならほかの競技も移せそうな……。二都物語も悪くはない?

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