春秋

春秋
2019/10/14付
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窓ガラスのテープをはがしつつ、ほっとしていた。金曜日の夜にあわただしく、家じゅうの窓に貼った粘着テープである。よかった、物が飛んでこなくて……。外に出て絶句した。巨大な植木鉢が道路に転がっている。これが窓を直撃しなかったのは、偶然に過ぎない。

▼粘着テープは防災リュックの奥にしまい込んでいた。中身を点検せず、すっかり忘れていたのだ。あったのは偶然に近い。スーパーやコンビニではどこも売り切れ、懐中電灯にも客が殺到していた。そもそもあの金曜日はパンもカップ麺も、あっという間に棚から消えた。あちこちで小さなパニックが起きていたのである。

▼土曜日に雨が強まって、たくさんの人がまた小さなパニックを体験したに違いない。防災無線の割れた声が、警戒レベル3「高齢者などは避難」だという。行けない人はどうする。さらにレベル4「全員避難」の「全員」とは? 浸水や土砂災害の恐れのある地域の人は全員という意味だと、どれほど周知されているのか。

▼窓ガラスにはテープの跡が少し残っただけである。しかし台風19号は、あれだけの備えの裏をかくように各地に無残な爪痕を残した。千曲川などの氾濫、多摩川流域の浸水、老人ホームの孤立。なんとかやり過ごした地域にだって、教訓は山ほど残されたのだ。まずは防災リュックの中身を、とくと調べなければならない。

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