アマゾンの「Day1」 お試し利用の感想、革新の糧に
先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

2019/10/14付
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NIKKEI MJ

米アマゾン・ドット・コムは9月25日にシアトル本社で開いたデバイス発表会で、「Day 1 Edition(デイ・ワン・エディション)」というカテゴリーを設けた。革新的な製品を別枠として扱うものだ。第1弾として紹介したのは、アマゾンの人工知能アレクサを搭載したメガネと指輪である。

指輪の「エコー・ループ」は極小マイクを通じてAIとやり取りできる(9月の米アマゾン・ドット・コムの発表会)

指輪の「エコー・ループ」は極小マイクを通じてAIとやり取りできる(9月の米アマゾン・ドット・コムの発表会)

メガネはこれまでもガラス面の極小スクリーンにデータを投映する製品が発表されてきた。一方、アマゾンの「エコー・フレーム」は、普通のメガネと同じようにガラス部分を度付きレンズやサングラスに変えられる。肝はつるにあり、小さなマイクやスピーカーを搭載し人工知能「アレクサ」とやりとりできる。

指輪の「エコー・ループ」も面白い。極小マイクとスピーカーを盛り込み片手を口に近づけてアレクサに色々尋ねられる。ちょっとスパイ映画みたいだ。

いずれもコンピューターをそのままを身につけるのではなく、人工知能(AI)とのやりとりに機能を絞り込んでいる。アレクサが万能なら何不自由なく出先で問題を解決できるが、どのAIもまだ途上。ただとても身軽で、AIと連絡を取る未来生活が感じられる。

興味深いのは「Day 1 Edition」というコンセプトである。同社によると「招待制のプログラムで、顧客がアマゾンの発明に参加できるもの」という。革新的なアイデアを顧客にいち早く体験してもらい、フィードバックを得て製品の機能や使い勝手を極める――。そこに正式なルートを設定したということだ。

2014年にエコーが登場した時も招待制だった。火がついたように評判になり、人々は製品のレビュー欄に多数の感想を寄せた。どう使っているのか何を面白がっているのか、レビュー欄を読んでいるだけでもかなりの情報が得られた。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

アレクサ関連デバイス担当のミリアム・ダニエル副社長に尋ねたところ、今回は利用者に応じてカスタム化が必要な製品を「Day 1 Edition」としていると説明した。メガネや指輪は利用者のサイズに合わせなければならない。筆者もぜひ試したいと招待に申し込んだところ、メガネのフレームやレンズの大きさなど細かな質問に答えなければならなかった。大量生産に踏み切る前に、限られたサイズでテスト版を出すのだろう。

「Day1」はアマゾンで合言葉のように使われる表現である。シアトルの本社ビルもその名前がついていた。直訳すると「初日」、意訳すれば「初心を忘れない」ということだ。奇妙に見えるアイデアも恐れず世に問うてみるということだろう。書籍のネット販売からスタートし、今や我々の生活の隅々にまで浸透していることを考えると、「Day1」の威力を感じる。

発表会に一瞬姿を見せた創業者のジェフ・ベゾス氏に「どこまで実験的にやっていけると思いますか」と尋ねたところ、「これからもずっとそう。アマゾンほど失敗作の多い企業はない」と返してきた。普通なら企業トップのかっこいい決まり文句と取りたいが、「Day1」の姿勢をうまく守り続ける秘策の存在をそこに感じた。

[日経MJ2019年10月14日付]

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