スポーツにデジタル変革
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

コラム(ビジネス)
2019/10/14付
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メルカリがJリーグ鹿島アントラーズの経営権を取得し話題となった。BリーグではDeNAが川崎ブレイブサンダースのオーナーとなった。IT企業が活発にスポーツ産業に参入するのは3つの理由がある。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1つはブランディングだ。参入しているのがIT企業の中でも消費者向けが中心の会社であることから理解できるだろう。もう一つの理由はスポーツチームとファンとの関係づくりに顧客情報管理(CRM)やデジタルマーケティングが活用できるからだ。これらの技術が進歩し、かつては不可能だった仕掛けができるようになった。IT企業である必然性だ。

3つ目は逆説的な言い方だが、ファンがそこにいたことに気づいてしまったことだ。マーケティングの醍醐味は顧客の育成だ。新規顧客を継続顧客に、さらにはブランドの大ファンとなるロイヤルカスタマーに仕立て上げることにある。

これが容易でないことはマーケティングの専門家ならわかっている。しかし、ここにはすでにファンがいたのだ。ファンにモノやサービスを提供する流れが可能になる。収入の大半をチケットやグッズの販売に依存していたスポーツ業界は旧態依然だった。だからデジタルトランスフォーメーションで、ブランディングと増収が可能になる。

これら企業がITで何を仕掛けてくるかは容易に想像できる。まずは「ファンエンゲージメント」。ソーシャルメディアを使い、ファンとチームのコミュニケーションを活発にする。

今までチケットを誰が購入したかもわからなかったが、アプリを導入すれば、何回来場してくれたか分かる。ロイヤルティーなどを指数化し、次の一手を打てる。現場に行かなくてもグッズを買えるようにオンラインチャネルを充実する。遠距離から応援する人にはトークンを購買してもらい、ファンによる投げ銭も新しい収入源となる。

新しい「スタジアムエクスペリエンス」がITで可能になる。サッカーのゴールにカメラを置けば、フィールドに立った臨場感で観戦できる。VRの効果で、家でもスタジアムで見るよりすごい体験ができるかもしれない。ピッチャーの動きをデータ化して分析し、靴の中にIoTセンサーを入れてダッシュのパフォーマンス分析をすることも可能になるだろう。

スポーツ分野のデジタル化でも日本は米国に後れをとっている。NFLもNBAもスタジアムエクスペリエンスの向上に力を入れている。他のテクノロジーと同様に最先端のソリューションを提供するスタートアップがあり、それに資金を提供する人たちがいる。そしてスポーツチームの責任者には、必ず技術を理解する人たちがいる。

日本には、まだそれがなかった。だからこそIT企業の参入により、スポーツは一段と熱くなる。

[日経産業新聞2019年10月14日付]

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