春秋

2019/10/10付
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中学3年生は、理科で「化学変化と電池」を学ぶ。昔日、食塩水に金属片を入れ、豆電球をともす実験をした昭和の子もおられよう。電池の歴史は、より大きな電圧を得るため電解質(食塩水)、正極・負極(金属片)の3要素をいかに最適化するかの試行錯誤だった。

▼電池の発明以来、電池はどのようにくふう、改善されてきたか調べて発表してみよう――。学齢期に「デジタル革命」なる言葉が存在しなかった世代が時代の流れを感じるのは、今の教科書のこんな記述だ。例として、デジタルカメラ用のニッケル水素電池、ノート型パソコンのリチウムイオン電池などが挙げられている。

▼ノーベル化学賞に吉野彰・旭化成名誉フェローらが選ばれた。「リチウムイオン電池の開発中は材料探しで何度も壁にぶつかった。私の指示で電池の加工に必要な樹脂のサンプルを入手した部下が、1986年に起きた『有楽町3億円強奪事件』への関与を疑われるハプニングもあった」。本紙に載った吉野さんの述懐だ。

▼犯人が強盗に用いた催涙スプレーに、同じ樹脂成分が含まれていたのだ。苦労を重ねた末のサラリーマン研究者の栄光を喜びたい。教科書は、「2次電池」「イオン化傾向」などリチウムイオン電池の基本原理も解説する。子や孫の教材を拝借し、家庭でにわか勉強のうんちくを傾けてはいかがだろう。昭和の子どもたち。

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