春秋

春秋
2019/10/8付
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ペスト菌を発見した北里柴三郎や黄熱病研究の野口英世も、かつては候補に名を連ねたというノーベル生理学・医学賞。20世紀と始まりをともにするその長い歴史をかえりみるとき、人間の英知や情熱と、さまざまな病気との格闘のあとをたどるようで興味がつきない。

▼第1回の栄誉はジフテリアの療法で成果をあげたドイツ人。のどの粘膜をおかし、全身に重篤な症状をもたらす病だ。次いで、高熱をもたらすマラリアの原虫はカが媒介すると突き止めた英国人に。人体の機構の解明ともあいまって私たちは、かつて短命の主因だった感染症などを克服し、安心してすごせるようになった。

▼今年は、細胞中の酸素の量のセンサーに関する研究によって米英の3人に賞が贈られることとなった。がんや心臓病、貧血の治療にも資するという。「分断」とか「孤立」といった言葉がまかり通っている足元の国際社会で、この賞の発表の時だけは、人類は確かに進歩しているのだ、と未来に希望を感じることができる。

▼横たわる課題のひとつは、新たな知見の応用に社会がどう向き合うのかだろう。劇的な効能の薬は高額で、保険適用すれば財政が傷むし、メーカーに値下げを求めれば開発意欲もおちよう。研究者、製薬側、患者と各方面が「よし」と納得できる仕組みができれば、それこそノーベル賞級に違いない。道は遠いのだろうか。

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