春秋

春秋
2019/10/5付
保存
共有
印刷
その他

路上でグラフィティを描いていた若者は、ピカピカの日本によほど衝撃を受けたのだろう。米国人アーティストのバスキアは、1982年の初来日から6年後に27歳で亡くなるまで何度も日本を訪れ、メード・イン・ジャパンの文字や¥の記号、電子機器などを描いた。

▼東京で開催中の個展を見ると、日本との縁の深い人だったことがよくわかる。80年代、この若い才能に目をつけた国内いくつかの公立美術館がいち早く作品を購入している。しかしいまや入手は不可能に近い。つい2年前には実業家の前沢友作氏が123億円で大型絵画を落札。21世紀になって、評価はうなぎ登りなのだ。

▼さて、世界の耳目を集めるグラフィティ作家がもう一人いる。英国を中心に活動するバンクシーの絵が過去最高額で競り落とされた。約13億円という価格もさることながら、その内容がセンセーショナルだ。チンパンジーたちが占拠する議会場をとりあげて、欧州連合(EU)離脱で迷走する英国を風刺しているとされる。

▼歴史画さながらの巨大な画面を前に、国民は苦笑いし、ため息をつくしかない。痛烈に皮肉られた議員たちはいったい何を思うのか。日本にとってもひとごとでない。世相に敏感な路上育ちのアーティストたちに、メッキのはがれかかった円マーク、オスばかりが目立つ国会や地方議会を題材にされぬようにしたいものだ。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]