春秋

春秋
2019/9/30付
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裏山に行けば、林がある。日本庭園やお茶の席でもおなじみの素材だ。たいがいの家庭にはざるやカゴもあるだろう。「竹」は日本人にとってとても身近な植物だ。そんな日常的な素材で作った工芸品がいまアートとして、米国をはじめ海外で熱い注目をあつめている。

▼ニューヨーク有数のコレクター、アビー夫妻が収集した作品70点以上を紹介する「竹工芸名品展」が全国を巡回中だ。これらがメトロポリタン美術館に寄贈される際のお披露目展には、47万人以上がおし寄せた。戦前の名品から現代のオブジェまで。繊細で柔軟な竹ひごの特性を生かして編みあげた美しい品が並んでいる。

▼日本には600種ほどが生育するが、豊かな資源は高齢化の影響をもろに受ける。手入れができず林が荒れる。成長の早い竹が周りの生態系をおびやかす。国はついにモウソウチクなどの竹類を「産業管理外来種」として適切な管理を呼びかけた。プラスチック代替品や輸入材の普及で国産の竹への関心は薄れるばかりだ。

▼工芸家に愛される虎皮模様の「虎竹」は、人が手をかけ育てなければ、やがてふつうの緑色にもどるそうだ。「シンプルな素材を切って割って編むだけ。そうして生まれる造形の不思議に魅了される」とメトロポリタンのモニカ・ビンチク学芸員は言う。外国での高い評価は職人の技に加え、質の高い材料あってのことだ。

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