消費増税実現後の課題(下) 生活保障・連帯強化の柱に
井手英策 慶応義塾大学教授
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ポイント
○中高所得層に負担が偏ると財源不足招く
○政府への不信感が税財政議論での障壁に
○財政再構築の断念は社会的な連帯の放棄
○中高所得層に負担が偏ると財源不足招く
○政府への不信感が税財政議論での障壁に
○財政再構築の断念は社会的な連帯の放棄
政治的な立場が刻印されるのは税の宿命だが、中でも消費税はとりわけ多くの批判にさらされてきた。
消費税は1%の税率引き上げで約2.8兆円の税収を生む。給与が1237万円以上の層の所得税率を1%上げても1400億円程度の税収にしかならないから、その多収性は群を抜く。
強力な税収調達力、それは低所得層が負担者となることの結果でもある。いわば多収性と逆進性は表裏一体の問題なのだが、ここで思考が止まり、増税反対か軽減税率かという二項対立に陥るところに日本の税制論議の限界がある。
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議論をシンプルにしよう。実額でみれば、ぜいたく品を購入する富裕層の消費税負担のほうが明らかに大きい。これを再分配に用いれば所得格差は当然小さくなる。従って逆進性が心配なら、税収を大胆に貧困対策に用いればよい。
異なる選択肢もある。所得制限を小さくし、なるべく広い範囲に医療・介護や教育などのサービスを給付することでも格差は縮小できる。例えば

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