ネット広告が嫌われる時代に ページビュー主義を脱せよ
奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2019/9/27付
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NIKKEI MJ

ここ最近、ネット広告をめぐって規制や訴訟が話題になることが増えている。

ブランドサミットでは、登壇者らがネット広告について話し合った(鹿児島市、コムエクスポジアム・ジャパン主催)

ブランドサミットでは、登壇者らがネット広告について話し合った(鹿児島市、コムエクスポジアム・ジャパン主催)

13日には、京都のNPO法人が健康食品販売会社を相手取り、定期購入が必要にもかかわらずネット広告で「お試し価格」のように表示する手法が景品表示法違反ではないかと京都地裁に提訴した。

公正取引委員会は8月、ネット企業の個人情報取り扱いを規制する指針案を発表。同意を得ずに消費者の個人情報をターゲティング広告に利用する行為が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用に当たる可能性があると指摘した。

日本におけるネット広告費はこの20年間増え続け、2018年には1兆7589億円と、地上波テレビ広告費の1兆7848億円に迫る。今年はネットとテレビが逆転すると言われている。短期間に急成長したことで、様々な問題が噴出し始めているようだ。

このような中、9月に鹿児島で開催されたブランドサミットでの、日本アドバタイザーズ協会と連携したセッションの議論を紹介したい。

登壇したのは、協会の常務理事であり資生堂ジャパンの小出誠氏、ネスレ日本の野沢英隆氏、大日本印刷の西田健氏と、博報堂ケトルの嶋浩一郎氏。セッションで最大の問題として指摘されたのが、ネット広告における「ページビュー至上主義」だった。

現在のネット広告市場はいわゆる顧客の「刈り取り」を目的として効率を高めてきた。ニーズが明らかになった顧客を検索連動型広告やターゲティング広告などで適切に自社の商品やサービスに誘導できる点では、ネット広告は間違いなく効果が高い。

ただ、とにかく大量の広告を露出してその中の1%に満たない人をいかに誘導するかという手法が進化しすぎた。その結果として、多くの人に広告が嫌われる時代に突入してしまったとも言える。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

嶋氏は、広告には本来、顧客が認識していないニーズを気づかせる役割もあると指摘。ネットで実現するには「ラジオ的クリエーティブを模索すべきだ」と提案していたのが印象的だった。

ラジオ番組はテレビほどの視聴者数は望めないが、伊集院光氏の番組のように毎回楽しみにする熱心なファンがいる。ネットメディアでも「ほぼ日刊イトイ新聞」や「北欧、暮らしの道具店」はこうした点で成功している。ページビューの多さとは別に、紹介される商品を信じて購入する熱量のあるファンが多くいるメディアになっている、というのが嶋氏の話だった。

ネスレの野沢氏は、ネスレではブランドマネジャーの役割は「自分が担当している間にブランドの価値を高めて次の人に渡すことだと教わった」という話もしていた。

現時点での最大の課題は、売り上げや販売数に比べ、熱量やブランドの価値は定量化が非常に難しい点だ。ネット広告ではページビューやクリック数など測定できる数値だけを並べて「広告」行為をする企業が増えた。それがユーザーの広告嫌いを招いたとも言えるだろう。

今、企業の広告に最も重要なのは測定できる数値だけを見るのだけでなく、測りにくい消費者の気持ちをどう想像するか、なのかもしれない。

[日経MJ2019年9月27日付]

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