消費増税実現後の課題(上) 「10%超」も早めに小刻みに
井堀利宏 政策研究大学院大学特別教授

経済教室
コラム(経済・金融)
2019/9/25付
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日本経済新聞 朝刊
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ポイント
○10年間消費増税なしなら将来大幅増税に
○消費税率上げ、小刻みなら反動減も小幅
○12年の3党合意にならい再度合意めざせ

安倍内閣は消費税増税を2度延期し、アベノミクス第2の矢で需要を喚起しようと、補正予算を何度も編成して歳出を増やした。

だがこの間の経済成長率が政府見込みより低かったこともあり、基礎的財政収支均衡化の目標年次はたびたび先送りされた。7月の内閣府試算でも、基礎的財政収支の黒字化は2027年度と1月の前回試算から1年遅れ、政府目標(25年度)からは2年遅れる(図参照)。それでもまだ高めの成長を見込んでおり、想定通りの成長が実現できないと財政再建は一層遠のく。

1980年代以降の消費税導入と税率引き上げ過程では政治的混乱が生じ、政治家への不信感が高まった。しかも与野党を問わず、多くの政治家が97年の景気後退の責任を当時の消費増税に転嫁したため、消費税は悪税の象徴になった。

19年10月にようやく消費税率は10%に引き上げられる。だが増税対策の名目で中小小売業の消費者へのポイント還元、プレミアム付き商品券、防災・減災・国土強じん化対策、住宅ローン減税の拡充や自動車取得・保有の税負担軽減などで、総額2兆3千億円程度の新たな手当てがなされる。消費税を増税しても歳出が一層拡大するため、財政再建の道筋は厳しいままだ。

今回の引き上げにあわせて軽減税率も導入される。2つの税率が共存すると、軽減税率対象品目の線引きが恣意的になるうえ、標準税率が適用された原材料で軽減税率の食料品を生産する場合、税の転嫁が複雑になる。軽減税率で税収が減る一方で、食料品を多く購入する高額所得者が相対的に得をするため、逆進性対策としての所得再分配効果もほとんど期待できない。

何でもありの増税対応策の結果、増税の意図が不透明になった。あるべき逆進性対策としては標準税率1本で広く課税し、税収の一部を弱者に還付する方が実務上も税制度としても明快だし、より公平で効率的だ。

【関連記事】 消費増税実現後の課題(中) 複数税率が生む問題 解消を

◇   ◇

安倍首相は今後10年程度消費税を再引き上げしない方針を示している。その通りならば、10年間で財政状況は一層悪化するだろう。

社会保障歳出の効率化や無駄の削減は必要不可欠であり、…

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