春秋

春秋
2019/9/24付
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家督を譲って頭を丸めたり、母屋を出て離れに住んだり。武士の時代から明治の世まで、隠居は制度として存在していた。働きづめだったが、これからは趣味にボランティアにと、のんびり暮らしていこう――。退職後の隠居生活を楽しみにしている方も多いだろうか。

▼そんな隠居計画に影を落とすニュースがまた発表された。総務省の新たな人口推計によると高齢化は一段と進み、65歳以上が総人口の約28%を占め、国民の7人に1人は75歳以上となった。驚くのは高齢者の就業率だ。65歳以上で働いている人は男性の約33%、女性では約17%にのぼる。主要国の中でも高い水準だという。

▼生涯現役、などと言われるまでもなく、日本のお年寄りはすでに働き、働かされているようだ。自らの手で収入を得るため、日々の生活を充実させるため。いくつになっても元気で働き続けることはもちろん素晴らしいことに違いない。だが一億総活躍をうたうあまり、隠居が白い目で見られるような社会にはしたくない。

▼かつての制度では藩主や役所に隠居願いを出す必要があり、理由が通れば許された。お城勤めの江戸の武士などは、なかなか隠居が認められず、高齢まで働き続けたという。いつまでも働いてもらうため、よもや隠居願いが復活しはしないだろうか。国が「主君」で、われわれが「家来」ではないから大丈夫だとは思うが。

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