春秋

春秋
2019/9/23付
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青魚、青物、光り物。呼び方はいろいろだが、日本人はおしなべて、背の青光りするアジやサバ、イワシのたぐいが大好きである。先だってはすし屋のカウンターで、コハダから始まりサヨリだキスだと、そればかりのご同輩を見た。味は上等、なのに割と安上がりだ。

▼不人気な時代もあった。冷遇を大いに憂えて「青魚下魚安魚讃歌」という本まで書き、復権を唱えたのは作家の高橋治さんだった。「この際、青魚の地位を高めてやりたい」「是非見直して頂きたい」……。九十九里浜のイワシをこよなく愛した人だけに「青魚愛」は半端ではなかったのだろう。四半世紀ほどの昔である。

▼それが近年はどういう風の吹き回しか、サバやイワシがずいぶんなブームだ。缶詰がその主役だが、水煮などのサバ缶の生産量が昨年は5万トン弱に達し、前年より27%も増えたそうである。長年、王者だったツナ缶(マグロ・カツオ類)を上回っているという。中身もパッケージも色とりどり、これもサバ缶かと目を疑う。

▼「金華さば」や「土佐の清水さば」などブランドサバも流行で、かの作家が存命ならさぞ驚いただろう。もっとも、こうなると「安魚」ではなくなるし、ふつうのサバだって獲(と)りすぎの心配が拭えない。そういえば今秋は、サンマが消えた。すし屋で光り物づくしをやろうとして欠落に気づき、苦い気持ちになるのである。

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