春秋

2019/9/19付
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1928年(昭和3年)に放送開始のラジオ体操は、生命保険と深い縁がある。その12年前、国は庶民も入りやすい簡易保険をつくった。健康増進への関心を広げながら保険のPRにもつなげる狙いで始めたのが、当時「国民保健体操」といっていたラジオ体操だった。

▼ところが戦時体制が強まるなか、ラジオ体操は「国民精神発揚」の手段へと変わっていく。簡易保険にも統制色が出てきたことだろう。もともと保険の案内には「冗費節約、勤倹貯蓄」などと国民に努力を促す言葉が並んでいた(逓信省編「逓信事業史」)。この保険の歴史には「お上の威光」が随所に見え隠れしている。

かんぽ生命保険と日本郵便による保険料の二重徴収などの不祥事も、国を後ろ盾にしてきたころの意識が抜けきらないことが原因ではないか。長い国営事業の歩みのなかで生まれた高齢者らの信頼に、つけ込んだ形で罪深い。先週、調査に入った金融庁には、営業ノルマの実態や組織の風通し以外にも解明すべき点がある。

日本郵政グループでは投資信託の販売でも、金融商品への理解度の確認を怠るなどの問題が明らかになった。郵政事業に限って傾くことはないと、たかをくくっていないか。簡易保険を始めたころの宣伝文は古歌を引きながら、明日はどうなるかわからないと世の無常を切々と説いている。いまの日本郵政自身への警鐘だ。

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