春秋

2019/9/15付
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「中秋」は旧暦8月15日のこと。ことしは一昨日だった。あいにく列島は雲のかかったところも多く、中秋の名月をどれだけの方が満喫できたのか、心もとない。幸いというべきか、月見に適するとされる時期は花見に比べて長い。旧暦9月の十三夜などに期待したい。

▼2カ月ほど前に盛り上がった話題なのでいささか心苦しいが、月といえば連想するのはアポロ11号である。半世紀前の1969年7月、人類を初めて月面に送り込んだ。「これは(ひとりの)人間にとって小さな一歩だが、人類にとっては大きな躍進だ」。ニール・アームストロング船長の名セリフは今も記憶に鮮やかだ。

▼奇妙にも太陽神の名前に由来するアポロ計画の終了後、月探査の取り組みは停滞した。それが近年ふたたび活気づいている。原動力のひとつは中国とインドの参入。中国の「嫦(じょう)娥(が)」計画は月に昇ったとされる仙女にちなむ。インドの「チャンドラヤーン」は「月の乗り物」といった意味。米国に比べ素直な命名といえよう。

▼地球の半身というべき天体だけに、理解を深めることは大切だ。ただ、資源開発や軍事利用の可能性など生臭い側面も指摘されているのは気になる。平安時代末期の歌人、西行は「月ゆえ惜しくなる命かな」と詠んだ。中秋の名月を来年も見たいから、長生きをのぞむ。そんな気持ちを無粋にそこなってもらいたくはない。

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