日米結ぶ発想と交渉力
新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

コラム(ビジネス)
2019/9/17付
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私がSOZOベンチャーズを創るきっかけとなったのは、中村幸一郎氏との出会いだ。私がまだベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの最高経営責任者(CEO)だった時期に、中村氏はベンチャーキャピタル業界を学びたいとカウフマンフェローズの門をたたいた。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

中村氏は非常に面白いキャリアを持っている。学生時代に今のヤフージャパンの創業・立ち上げに孫泰蔵氏とともに関わった。大企業の三菱商事では通信キャリア事業や投資分野で活躍。日本の早稲田大学で学び、米国のシカゴ大学院でMBAを取得した。

中村氏を私に紹介したのが、シカゴ大のMBA教授でベンチャーキャピタル業界の重鎮でもあるスティーブ・カプラン氏だ。彼はプライベートエクイティ業界のファイナンス、データモデルの分析の大家で、彼が主催するシカゴ大学のビジネスプランコンテストはアクセラレーターランキングでもトップ5に入っていることでも知られている。

そこで中村氏は2年連続で入賞するなどの実績を作り、シカゴ大学のベンチャー関連のアカデミアの中で高い信頼を構築した。スティーブからの紹介で私との信頼関係ができるのにも時間がかからなかった。

カウフマンフェローズでは「ゾーン・オブ・ジーニアス(ZOG)」という実習を行う。自分が得意とするものは何かを知り、それを生かすためのものだ。

私が思う中村氏のZOGは日本企業とシリコンバレーのテクノロジーを結び付けた事業構築力だ。彼は誰も気が付かないようなユニークなアングルで事業機会を見いだし、シリコンバレーの最先端技術を日本の大企業に結び付け、具現化する力がある。そのためには、独自の強い意見と自信を持つことは重要だ。

アイデアだけでもバランスを欠く。日本企業にはイノベーションを促し、米スタートアップにはグローバル化と成長を同時に促すには、忍耐力も必要だ。

中村氏の功績として、SOZOでは大手銀行や大手保険会社とシリコンバレーの提携を次々と実現してきている。特にレグテックと言われる規制がある産業や、フィンテックのようにエクスパティーズが必要な分野での先見性や見地に優れていた。

日本企業はシリコンバレーで決していつも好意的に受け入れられるわけではない。市場の独自性や言語の違いから来るビジネスの違いやコミュニケーションの難しさだけでなく、よく指摘される日本企業の意思決定の遅さが事業提携の実現を難しくする。しかし、中村氏の日米のビジネスやカルチャーへの理解と、粘り強い交渉力は、両国を橋渡しするのに役立てられている。

Palantir、Square、Coinbase、Zoom、Fastlyなどの実績から、米誌フォーブスによるミダスリスト(影響力の大きなベンチャー投資家ランキング)の上位100位入りには中村氏が日本人で最も近いと思っている。そんな姿が早く見られることを楽しみにしている。

[日経産業新聞2019年9月17日付]

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