マーケターキャリア協会 専門性の向上、磨き合う契機に
奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

コラム(ビジネス)
2019/9/13付
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NIKKEI MJ

デジタルへの対応が必須となったマーケティングを、経営の中核に据える企業がゆっくりと増えている。しかし、一貫性のない人事やスタッフの転出は少なくない。現状に一石を投じようとする動きが若い世代から出ている。

女性マーケター向けの会合では「勇気が出ました」と講師に声をかける参加者もいた(7月、東京都新宿区)

女性マーケター向けの会合では「勇気が出ました」と講師に声をかける参加者もいた(7月、東京都新宿区)

3月にスタートしたマーケターキャリア協会(MCA)がその一つだ。発起人の中村全信さんはマスコミからIT(情報技術)企業への転職経験をもつ。前職で広告関連の教育や取材に関わるなか、ある疑問を感じていたという。

デザイナーやコピーライターは独立しても名指しで仕事を受けられキャリアパスが明確だ。対して、企業で仕事を発注するマーケターは、本人も上司も他部署に異動しがちで仕事を極められない。ロールモデルも不在だ――。

周囲のマーケターにも共感する人が多く、協会の設立に至った。掲げるミッションは3つ。「ビジネスを動かすマーケティングの貢献度を可視化する」「プロフェッショナルとしてのマーケターのキャリア構築を支援する」「ビジネスパーソンのマーケティング思考を育成する」だ。

1つ目の貢献度の可視化については、企業でマーケティングを扱うのが主に宣伝広告部門で、「コストセンターとして位置づけられていることにも忸怩(じくじ)たる思いがある」と中村さん。マーケティングが利益の源泉であることを企業に理解してもらうため、成功事例を発信する企画を準備している。

2つ目のキャリア構築支援では、様々なマーケターと話す中で「自分の仕事をうまく説明できない人が多いことに違和感を感じていた」。転職を強く意識しないなら、自分が携わった仕事や自分の能力を整理する機会がない。そこでMCAはキャリアの棚卸しにも力を入れる。3つ目のマーケティング思考の育成でも、未経験の人も気軽に学べるデジタルのノウハウを交えたワークショップやセミナーを開く。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

無料会員は750人を超え、イベントでは若手や女性も目立つ。最近のイベントで印象的だったと中村さんが挙げるのは女性マーケター向けの会合。パナソニックの山口有希子さんやクレディセゾンの栗田宏美さんを招き、名刺交換会では何人もの女性が「勇気が出ました」「明日からがんばれます」と声をかけていたそうだ。男性の上司と女性の部下が一緒に来ているケースもあり、非常に感銘を受けたという。

「マーケターとしての幸福」を論じ合うワークショップも心に残ったという。マーケター自身の幸福を考えるきっかけになり、かつ消費者の幸福を考える上でも面白い取り組みだろう。これからの企業は消費者と幸福感を共有することが今まで以上に重要となると、筆者も思う。

ロールモデル不在や企業の冷遇を嘆くのではなく、後から来る人たちの道標を作ろうという私設勉強会は、知名度の高いマーケターも始めている。携わる人が一緒に学ぶ場を作って研さんし合うのは、マーケティング業界だけでなく日本の企業の未来にとって元気の出る取り組みだ。デジタル抜きでマーケティングを語れないなか、双方を俯瞰(ふかん)して学べる場も望まれる。積極的に応援したい。

[日経MJ2019年9月13日付]

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