産学連携の専門職 集う場
SmartTimes 東京農工大学教授 伊藤伸氏

コラム(ビジネス)
2019/9/11付
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産学連携や大学からの技術移転に携わる専門職の大規模なイベントが2004年から続いている。例年、9月に2日間開催され、500人程度の参加者を集めるUNITT(大学技術移転協議会)のアニュアルカンファレンスだ。

新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー株式会社設立とともに社長に就任(現任)。2013年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。

新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー株式会社設立とともに社長に就任(現任)。2013年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。

初回は当時の小泉純一郎首相が知的財産立国を打ち出し、中村修二氏の職務発明対価に一審で200億円の支払いが命じられた時代だ。国立大学の法人化直後でもあり、会場には熱気があふれた。バブル崩壊後の経済停滞からの活路との期待も加わり、参加者は「鉱脈」を探し当てた感覚を抱いていた印象がある。

知的財産を介して大学や公的研究機関の研究成果を組織的に産業界に橋渡しする専門職はそれまで大学などにない機能で、業務は手探りの状態だった。山本貴史・東京大学TLO社長がけん引役となり、ベストプラクティスの共有による相互研さんと人的ネットワークの形成が可能になる貴重な機会をつくりあげた。

カンファレンスは双方向性を強く意識し、登壇者の講演時間を半分程度に抑え、残りを会場全体での自由討議に充てた。参加者はセッションの幕あいや懇親会もコミュニケーションの場として貪欲に活用した。

内容は当然、実践的。共同研究や大学発ベンチャーといった主要なテーマは数年おきに繰り返し登場し、海外ライセンスから中小規模大学、地域での取り組みまで多岐にわたった。実際に参加者は特許ライセンスばかりでなく、広範な専門業務に従事していた。米国を手本にしたが、国内の実情を踏まえた内容を追い求めた。知識伝達にとどまらず、大学知財本部や技術移転機関(TLO)の経営といった組織のかじ取りに関わる討論を積極的に取り上げたのは、その証しだ。

登壇者や会場の意見が割れることもしばしばだった。iPS細胞やビッグデータ、安全保障に貿易管理など、産学連携の深化や時代を反映してテーマは柔軟に変化した。参加者には産業界を中心に他業種からの転職者が多かったため基礎講座も毎年、複数を設定した。こうした姿勢が長期に継続した理由だろう。

文部科学省の調査では04年度から17年度までに国内大学などの共同研究費は2.8倍の約732億円、特許権などによる収入は5.9倍の約32億円に成長した。特許のライセンス収入は米国には依然として及ばないが、産学連携と技術移転の専門職は確実に大学や公的研究機関に定着した。

今年のカンファレンスは9月6日、7日に東京・北千住の東京電機大学で開かれた。中心となっている大阪大学の正城敏博教授は「大学の産学連携の実務者はもちろん、企業の新規事業担当者やベンチャーキャピタリストにも参画してもらい、本音のディスカッションを通してイノベーション貢献への手掛かりをつかんでほしい」と話している。

[日経産業新聞2019年9月11日付]

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