エコシステムと英語
新風シリコンバレー 米NSVウルフ・キャピタルマネージングパートナー 校條浩氏

コラム(ビジネス)
2019/9/10付
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最近、シリコンバレーに送られた駐在員を揶揄(やゆ)するような話を聞いて心が痛んだ。多くの日本企業が会員となっているスタートアップのインキュベーション施設がある。そこでは、会員企業のために、その施設に集まるスタートアップの情報を共有してくれる。特に現地人の係が丁寧に応対してくれることで、日本企業には人気が高い。その人気施設が「新橋化」している、というのだ。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

東京の新橋はサラリーマンがたむろし、居酒屋で飲んで愚痴をこぼしているようなイメージがある。どうも日本企業の駐在員同士がたむろしている様子が新橋のようだ、というのだ。私は30年近くシリコンバレーの駐在員と接してきたが、今まで「新橋」を連想したことはなかった。ただ、思い当たるふしはある。

以前は、エレクトロニクスやIT分野のエンジニアや専門家が多く、あまり英語が得意ではない人でも一生懸命キーワードを並べて、現地人と交流し、人間関係を構築していた。それが、最近事情が変わってきた。ITによる事業イノベーションの必要性があらゆる業種に広がることにより、テクノロジーやイノベーションになじみのない人がシリコンバレーに送られてくるようになった。

それらの駐在員の多くが、そもそも社外の人と交流することも慣れてない上に、実用的な英語がネックになっているようだ。これでは、シリコンバレーのエコシステムに入り込んで新たな事業の息吹を日本に吹き込むことは難しい。

これはシリコンバレーの日本人駐在員だけの問題ではない。シリコンバレーから学ぶことで、世界各国でスタートアップのエコシステムが成長しているが、そこから日本が取り残されているのである。日本のベンチャー・エコシステムが「新橋化」している、とも言える。

米国、欧州から北京、上海やシンガポールなどアジアにまでエコシステムが拡大している。最近では、アフリカも注目され始めた。それぞれの強みを生かしてエコシステムの発展につなげている。

各地域は孤立することなく、シリコンバレー始め世界中のエコシステムの起業家、投資家たちと国境に関係なくコミュニケーションし、お互いに刺激を受け、情報交換をしている。例えば、私はポーランドのスタートアップの社外取締役であり、私の会社はオランダのベンチャー・キャピタルに出資している。それを通してシリコンバレーの情報、仕組み、ノウハウが彼らに伝搬されるのである。

世界中の人々が交流する時の共通言語は英語だ。シリコンバレーの日本企業の駐在員も日本の起業家などの人材も、実用的な英語を身につけることが求められる。だが、それを彼らの努力だけの問題にしてはいけない。日本の英語教育が実用的に全く役に立っていないことが最大の問題だろう。脳科学に基づいたオンライン英語教育のスタートアップなども出てきた。英語が実用的に使えるようになる教育メソッドのイノベーションに期待したい。

[日経産業新聞2019年9月10日付]

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