春秋

2019/9/8付
保存
共有
印刷
その他

「中二病」はタレント、伊集院光さんのラジオ番組から生まれた言葉だ。思春期にありがちなちょっと恥ずかしい言動を指す。母親に「どこ行くの」と聞かれ、「外」とだけ答える。サラリーマンを歯車、警察を権力の犬などと呼びだす――。こんな投稿に笑わされた。

▼その中に「サンマやアユは、はらわたがうまいと通ぶる」というものがあった。確かにそうだ。子どものころには閉口したあの苦さが、大人になると、何とも魅力的な味に思える。だが中二病にも登場するこの秋の味覚の資源量はいま、大幅に減っているらしい。今年は痩せているうえ水揚げが少なく、異例の高値が続く。

▼サンマは低水温を好むため、表層の水温が上がっている日本近海を避けているという。おいしさにがぜん目覚めたか、公海で漁獲量を急増させる中国、台湾を非難する声も強い。しかし日本もこれまで、世界中の海に魚を追い求めてきた身である。いまだってクジラやマグロやウナギをめぐって白い目で見られているのだ。

▼だからこそ、ここは日本が国際的な資源管理の音頭を取り、範を示すしかあるまい。各国が競った結果、サンマが食卓から姿を消してしまっては元も子もない。文人の佐藤春夫は道ならぬ恋に苦悩し、「さんま苦いか塩っぱいか」と綴(つづ)った。世代も時代も超え、身近な存在であり続けるサンマ。身も皮もはらわたもうまい。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]