春秋

2019/9/5付
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昭和の時代、中央省庁にはびこっていたのが「通達行政」だ。法律や政省令に細かい定めのない事務の解釈などについて、官僚が通達という一片の文書で決めてしまう。上意下達の響きがあった。行政法学者は、「法治主義の原理に反する」と古くから問題視してきた。

▼元最高裁判事で行政法の泰斗、田中二郎さんの著作によると、戦後、最も物議を醸した通達は「ふるさと選挙権」だという。1953年、旧自治庁は故郷からの仕送りで都市部などに暮らす学生について、選挙権を修学地ではなく郷里にする、との通達を発した。反発した学生が訴訟を起こし最高裁で国の敗訴が確定した。

▼こちらも、古里を巡る騒動である。ふるさと納税の新制度から国が大阪府泉佐野市を除いた問題で、総務省の第三者機関が異例の勧告をした。除外は不当とする同市の主張を、大筋で認めたのだ。「返礼品は寄付額の3割以下」などとする過去の通知への違反を理由に、同市を外したのは違法の疑いがある、と結論づけた。

▼1999年に成立した地方分権一括法で、旧来の通達行政は根拠を失った。今回、問題になった通知はあくまで助言で法的拘束力がない。政治学者の松下圭一さんは、「自治体による独自決定の責任は市民から問われる」と説いた。同市の強引な寄付集めが、社会常識にかなうかは市民の審判に委ねられる、ということか。

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