多様な家族形態を認める
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

2019/9/4付
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スタンフォード大のビジネススクールで先輩方から必ず受講する価値があると言われるクラスがある。それはファイナンスでも起業でも事業戦略でもない。「インターパーソナルダイナミックス」という名の授業、いわば本音で対人関係を構築するというヒューマンスキルのクラスだ。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

クラスも中盤になると、みんなが自らの苦悩や喜びを表現するようになる。ある男子学生が言った。「僕は、みんなが思春期になって女の子が好きになるように当たり前に男の子が好きになった。そうしたら、家族みんなが町中から差別を受けたんだ」。米国は地域によって文化や考え方が異なる。南部の都市ではひどい迫害を受けたそうだ。カリフォルニア州北部やスタンフォードはリベラルで知られる。「ここでは、みんなが受け入れてくれた。来られてうれしかった」。そう言って涙を流した。

就職時に大企業からオファーがないなど女性としての差別を経験している私は、差別される側の悲しみはわかるつもりだ。そうでなくても私はその学生が受けた差別を聞いて、心を動かされた。男性と女性以外に、人にはもっと細かな分類がある。それは生まれつきのものだ。だから私は、いかなる差別もない会社づくりを目指している。

履歴書に性別や年齢を書く必要はなく、LGBT(性的少数者)の人たちも申請すれば婚姻のメリットが受けられる制度がある。男女の区別なく利用できるトイレも用意している。

私が設立時からかかわっているFamieeという社団法人も、多様な家族形態が当たり前のように認められる社会の実現を目指している。現在のプロジェクトは、いくつかの自治体が発行しているパートナーシップ証明書に相当するものを民間で発行するものだ。LGBTの婚姻、事実婚、精子や卵子提供を受けてできた親子、代理母の協力による親子などの家族関係をブロックチェーンの技術で証明する。プロジェクトメンバーにはブロックチェーン技術者の名前が並ぶ。

同性の婚姻を認めて証明書を発行している自治体は少ない。行政の指導を待たず民間で夫婦関係であることを検証して証明書を発行すれば、日本の行政で認められていない家族関係にある人たちの恩恵は大きい。証明書を企業が認めれば、多様化する家族もその利益を受けることができる。

複数の企業に現在ヒアリングしており、国際的な企業では「国を超えた仕組みにできないか」と問い合わせもある。ブロックチェーンの得意とするところで、将来性は大きいと思う。

パートナーシップ証明書で得られるメリットなど、ささいなことと言う人もいるかもしれない。しかし、その人たちにとっては、同じと認められることが重要なのだ。同じスタートラインに並ぶことが、全ての人間の基本的人権である。

[日経産業新聞2019年9月4日付]

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