ジャパンタクシー独走 広告や相乗り、配車に新モデルも
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者、杉山信弘氏

2019/9/4付
保存
共有
印刷
その他

NIKKEI MJ

東京五輪が1年後に迫り公共交通機関のパンクが懸念される中、新しい輸送サービスに注目が集まっている。フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、主要なタクシー配車4アプリの合計利用者数が昨年末と比べて5割増えている。

「0円タクシー」ではどん兵衛を全面に掲げた車両も登場した(2018年12月)

「0円タクシー」ではどん兵衛を全面に掲げた車両も登場した(2018年12月)

業界の成長を引っ張るのは首位の「ジャパンタクシー」だ。2018年9月に「全国タクシー」から名称を変更。トヨタ自動車NTTドコモとの資本業務提携や、グーグルマップやナビタイムとの連携により、次世代移動サービス「MaaS」を推進している。今年7月時点で月間利用者数(MAU)は38万人と他配車アプリの2倍を超える。

ジャパンタクシーを猛追するのは中国の配車アプリ大手、滴滴出行とソフトバンクが共同で運営する「DiDi」だ。18年9月に大阪市内でサービスを開始。日本では後発ながら、PayPay(ペイペイ)のように大規模なキャンペーンを展開。同年12月には女優の広瀬アリスを起用したテレビCMを大阪で流し、利用者を増やしている。

ディー・エヌ・エー(DeNA)傘下で、神奈川県からサービスを始めた「MOV」は後発ながら面白いサービスを提供している。車両そのものを広告媒体にするものだ。

スポンサーと広告費用を出し合い、「0円タクシー」を展開。昨年末の「どん兵衛タクシー」や今夏の「めちゃ冷えタクシー」が記憶に新しい。広告宣伝費の折半、コラボによる話題作り、0円という顧客体験の向上が同時に獲得できる一石三鳥の施策だ。ジャパンタクシーも車内でサイネージ広告を手掛けるが、あくまで副収入の位置付けだ。

一方、苦戦しているのはもはや老舗と呼べる「ウーバー」だ。好調な宅配代行サービス「ウーバーイーツ」と比べても利用者数が伸びていない。DiDi、MOVにも抜かれてしまった。

ウーバーの真骨頂はタクシー配車ではなくライドシェア。自家用車を使い一般市民が副収入を得られる点が画期的だが、日本では道路運送法の規制を受ける。

もう一つの強みである相乗りも生かせない。乗車位置や目的地に応じて最適なユーザーと車両をつなぎ相乗りしてコストを下げるが、相乗りも日本では経路や区域を指定した許可制となっているためだ。ただ、政府の未来投資会議は解禁の方向性に言及しており、巻き返しもあり得る。

今後は人口密度に応じ、ビジネスモデルの住み分けが進むと筆者は考える。都心や大阪、横浜などの人口密度の高い地域では、広告やデータ獲得などのマネタイズポイントに相乗りが組み合わさり、輸送費が低減されて「0円タクシー」に近づくだろう。

人口が減りタクシー会社の採算が合わない過疎地域では、規制緩和とともに副業としての輸送が一般的になっていく。五輪期間だけの一過性でない広がりに期待したい。

[日経MJ2019年9月4日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]