「ギグ」経済圏が身近に
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

コラム(ビジネス)
2019/9/3付
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お笑い芸人の「闇営業」問題は記憶に新しい。その問題の是非は置いておいて、同時期に話題になったメガバンクにおける副業解禁のニュースとともに、どちらも自分は所属する会社以外のルートで、自分の価値を認めてもらい自ら仕事を開拓できるのだろうか、と考えさせられた。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

このような働き方含め、非正規雇用やフリーランサーのような形でネット上で単発や短期の仕事(ギグ)を請け負う「ギグ・エコノミー」という働き方が広がっている。

背景には、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用により、フルタイムの仕事の減少という企業側の事情がひとつ。もうひとつはテクノロジーを使って時間や場所に縛られることなく仕事ができるようになったため、1980年代以降に生まれたミレニアル世代を中心に一つの企業に所属し続けるフルタイムの仕事を嫌がる傾向があると言われる。

実際にシリコンバレーの企業における従業員の平均勤続年数は18カ月と言われ、非常に人材の流動性が高く、終身雇用という概念は希薄だ。

タクシー業界を破壊したウーバーも、実は最も影響を与えたのは「働き方」だと言える。ウーバーの運転手としてちょっとしたすきま時間でも働けるようになった。シリコンバレーのIT企業に勤める従業員が、車で通勤するついでにウーバーの運転手として人を送迎するのは見慣れた副業の風景だ。

数カ月前にシリコンバレーで遭遇したウーバーの運転手は主婦で興味深い話を聞かせてくれた。その主婦は私を車に乗せる前にちょうど実家に行ったところだった。だが、そこで財布を忘れてしまい、夕飯の買い物ができなくなってしまった。そこでちょっとウーバーの運転手をして、私を送り届けることですぐにウーバーからアプリ経由で報酬をもらい買い物に行くのだという。

主婦が買い物のためにATMで現金をおろす代わりに、ちょっとしたすきま時間に働いてすぐにお金を得るという気軽さは、母さんが夜なべして内職するイメージとは程遠い。まさにウーバーというテクノロジーが変えたすきま時間の働き方だ。

他にも、働く場所を自由に選べるシェアオフィスのウィーワークや、アップワークをはじめとする自由に働きたいフリーランサーと企業を仲介して業務を委託するクラウドソーシングのサービスも増えている。

本当にいい時代になったと思う。個人で自由に仕事するチャンスにあふれ、企業側もそれを認め、サポートするツールもそろっている。

インテュイット社の調査によると、2020年までに米国における労働者の40%以上がフリーエージェントとして独立して仕事を請け負うと予測されている。自社の終身雇用や年功序列を毒づく前に、自らのフリーエージェント宣言に備えるつもりで、目の前の仕事に没頭し圧倒的な個人成績を残す努力をしていかなければいけない。

[日経産業新聞2019年9月3日付]

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