電力の歴史と自然、身近に 宇奈月温泉(富山県黒部市)
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コラム(ビジネス)
2019/9/2付
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NIKKEI MJ

日本の成長を電力供給で支えた「黒部ダム」を生んだ水系が流れる富山県黒部市。市内にある宇奈月温泉はトロッコ列車「黒部峡谷鉄道」の起点でもあり、多くの旅行客が訪れる。もともとは電力工事に関わる人の福利厚生のために造られた温泉地だった。電力開発の歴史が分かる記念館や、黒部の自然を描いた日本画家・平山郁夫氏らの作品がある美術館が目玉だ。

トロッコが走る黒部峡谷鉄道の起点も宇奈月温泉にある(宇奈月駅周辺)

トロッコが走る黒部峡谷鉄道の起点も宇奈月温泉にある(宇奈月駅周辺)

東京駅から北陸新幹線「はくたか」で約2時間20分。黒部宇奈月温泉駅(富山県黒部市)で下車し、車で20分ほど行くと宇奈月温泉に着く。10件前後の旅館やホテルのほか、大人が500円で入れる総湯「湯めどころ宇奈月」などが並ぶ。

訪日客も含めて多くの人が集まるのが、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅周辺だ。窓がない車両も連結した10両前後の列車は、終点の欅平(けやきだいら)駅まで約1時間20分、平均時速15キロで走る。風や木々のにおいが感じられ、家族連れに人気だ。東京から小学生の子供を連れてきた30代女性は「大人は自然、子供は電車を楽しめた」と満足そうだ。

黒部峡谷鉄道は電源開発用の資材や人を運ぶために敷設された。そして宇奈月温泉も電源開発がなければ存在しなかった。「工事関係者の厚生娯楽の基地に」。こう考えた土木技師の山田胖(ゆたか)氏が1923年、7キロ先の黒薙温泉から今の宇奈月温泉エリアに湯を引き込んだのが起源だ。

宇奈月駅前にある黒部川電気記念館では、世紀の大工事といわれた黒部ダム・黒部川第四発電所の建設時の映像を流したり、プロジェクションマッピングでダムの様子を再現したりしている。子供にもわかりやすいように配慮した施設だ。

「セレネ美術館」には黒部峡谷を描いた7人の日本画家の絵が並ぶ。平山氏は自らヘリコプターやトロッコ列車に乗り、スケッチを重ねたという。著名画家の作品を通じて黒部の雄大さを感じることができる。

開湯100年を迎える2023年には北陸新幹線が福井県敦賀市まで延び、関西からの観光客が増えると見込む。翌24年には欅平駅と黒部ダムを結ぶ工事用トンネル「関西電力黒部ルート」が一般開放される予定だ。02年のNHK紅白歌合戦で中島みゆきさんが「地上の星」を歌ったトンネルも見どころの1つになる。

「電源開発や自然といった宇奈月ならではのストーリーを訴え、客を呼び込みたい」。老舗旅館、延楽の浜田政利社長は話す。お湯や富山湾の魚を楽しみつつ、知識欲もかき立てられる温泉地づくりを目指す。

(富山支局長 国司田拓児)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年9月2日付]

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