終わらないコンテンツ、映画に学ぶ立体的なファン育成
奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2019/8/30付
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NIKKEI MJ

映画「スター・ウォーズ」9部作完結編の公開を12月20日に控え、情報が徐々に解禁されている。一方、2022年以降に隔年で新しいシリーズを公開すると発表しているのを、皆さんはご存じだろうか?

9部作の完結編となる「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」は12月20日に公開を控える(C)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

9部作の完結編となる「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」は12月20日に公開を控える(C)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

今回の作品を「最後」と宣伝した方が、たくさんの人が映画を見に来てくれそうなもの。だがディズニーはあえて完結編の公開前に、シリーズの継続を発表した。

「終わらないコンテンツ」は、スター・ウォーズだけではない。映画での世界興行収入1位におよそ10年も君臨してきた「アバター」が7月、ついに「アベンジャーズ/エンドゲーム」に抜かれた。

アバターの公開は09年。初の本格的3D映画という話題性もあり、興行収入は27億ドル(約2900億円)を超えた。アバターに続く興行収入21億ドルの「タイタニック」は1997年の公開で、この20年にわたり20億ドルを超えるのがいかに難しかったかが良く分かる。インターネットの普及で映画の価値が変わるなか、記録更新は難しいと考える人がつい数年前まで多くいた。

しかし環境は変わりつつある。この5年ほどに公開された多数の映画が10億ドル以上の興行収入をたたき出した。注目したいのは、ほとんどがシリーズものという点だ。

一昔前はアバターにしてもタイタニックにしても一作完結だった。最近は映画の1作目を公開するタイミングからシリーズ化を前提とするケースが増えている。成功の象徴がアベンジャーズを含むマーベル・シネマティック・ユニバースと言えるだろう。

一連のマーベルの作品のスタートとなった08年の「アイアンマン」は、下馬評を超えるヒットを収めてシリーズ化の礎を築いたが、興行収入は6億ドル弱だった。マーベルは09年にディズニーに買収され、アイアンマンを筆頭に11年間で22作品を積み上げる。そうしてついにエンドゲームでアバターを抜き去った。

これにはネットの普及によるビジネスモデルの変化が大きい。従来の映画は単体で勝負していたが、現在のディズニーはテレビドラマやゲームなどファンのためにさまざまな接点を立体的に提供する。米ディズニーランドに5月にスター・ウォーズのエリアを開設、20年にはマーベル映画のエリアも設ける。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

様々なコンテンツや体験により、ファンのコミュニティーがネット上でつながる。映画が公開される度にSNSで盛り上がり作品への思いを議論できることも、ファン層の拡大に確実に貢献している。

ディズニーが11月に始める動画配信サービス「Disney+」もその一環と言える。今や映画は単体で楽しむものではなく、コンテンツの世界観を楽しむひとつの手段へと変わってきた。

映画は単独作品の内容こそが価値という考え方もあるだろう。だが興行収入や事業規模から考えると、地道にファンを積み上げ、終わらないコンテンツとして世界観や事業を広げることが重要な時代に入っているようだ。

こうしたトレンドの変化は映画だけではない。既存のファンとつながりファンの期待に応え続けることが事業規模の拡大に貢献するのは、ビジネスの世界も同じはずだ。

[日経MJ2019年8月30日付]

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