春秋

2019/8/29付
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1982年7月の長崎大水害では死者・行方不明者約300人を数えた。119番通報の生々しい交信記録が残る。夕刻から夜、豪雨による被害の不意打ちをくらった住民が救助を求め相次ぎ受話器を握った。しかし、消防隊員らはすでに現場に出払ってしまっている。

▼「手が回らんです」と謝る隊員らに「見殺しということか?」と怒り出す住民。殺到する要請に「おたくはいま、生きるか死ぬかしてますか?」と逆に問うケースもあった。被災者も消防もパニックに陥っていたことがわかる。80万人以上に避難指示が出た今回の九州北部の記録的大雨。冷静な行動や対処はできたろうか。

▼未明から土砂降りが続き、明け方に道路の冠水や川の増水に気付いた地域も多いようだ。積乱雲が次々通過したり停滞したりしたのが原因とされるが、大気や風の条件がそろえば所は選ばない。東日本大震災で「釜石の奇跡」を生む防災教育に携わった片田敏孝さんが本紙に「東京大氾濫」に備えよ、との寄稿をしている。

▼隅田川や荒川などに面する都内の5区は1カ所でも堤防が決壊すれば最大で10メートル浸水、250万人が被害を受けるという。行政だけで対応できる数ではなく、指示を待たず自ら逃げよ、と呼びかける。救助活動の限界を知り、早めの避難を心がける。37年前の大水害の尊い犠牲に報いるためにも物心両面で備えを進めよう。

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