春秋

2019/8/28付
保存
共有
印刷
その他

地方競馬には公認の「予想屋」がいる。出走馬の状態や騎手との相性、そして種々のデータをもとに、レースの行方を占う商売である。「さあ、穴出るよ、穴出るよ」などと口上もなめらかに客を引き、数字を記した紙を売るわけだ。その道の達人と呼ばれる人もいる。

▼お馬さんの走りも測りがたいが、なかなか読めないのは人間の心だ。ところが学生の就職活動に必須の情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、個々の就活生の振るまいを推測し、商品化していた。「内定辞退率予測」なる代物である。さてどんな口上で売りさばいたものか、求めた企業は38社にのぼる。

▼本人たちには事実上無断で、サイトの閲覧状況を人工知能(AI)で分析して辞退率を割り出したという。就活生を勝手に5段階に分けていたそうだから、人生を左右しかねない話である。データの活用はこれから大いに伸びるビジネスだが、これはひどい逸脱だろう。政府の個人情報保護委員会は初の是正勧告を出した。

▼それにしてもこの一件は、AIによる「人の格付け」を連想させてやまない。カードの利用歴などをもとにした「信用スコア」が暴走しないか。信用力が低いと判断された人が社会からはじき出されないか。いささかのロマンを秘めた人間の「予想」と、AIの合理的な「予測」と。バランスを欠けば殺伐たる未来が待つ。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]