起業家育成、更生の手段に
SmartTimes サムライインキュベート創業者 代表取締役 共同経営パートナー 榊原健太郎氏

2019/8/28付
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先日、ある少年院を視察メンバーとして訪問した。起業家の支援・育成をしている立場から、何か更生の機会をつくれないかと個人的に考えていたからだ。初めての訪問は、なんともいえない緊張感があった。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

訪問したのは少年院の多くを占める第一種少年院。職員からレクチャーを受けた後、院生の講義を受ける姿や作業する姿を見学した。視察が終わると、行く前とは印象が180度変わった。勝手に思い込んでいた薄暗いイメージはなく、施設も明るく清潔だった。

職員の方々が院生へ向ける目は優しく、行動からも更生してほしいとの思いを感じた。最も気がかりだった院生の印象も、どこにでもいるごく普通の少年で、講義で学ぼうとする積極性はとても印象的だった。

印象がプラスに変わった部分が多かった一方で、改善できるのではないかと感じた部分もあった。例えば更生プログラムだ。現在も専用の施設で陶芸、木工、溶接の実技を学ぶものはあるが、それでも卒院後の就職は難しい現状がある。

これを人手不足が叫ばれている「エンジニア育成」に変えるか、追加したらどうだろう。若い彼らはスポンジのように吸収し、卒院する頃には初級エンジニアとして誇りを持てるだろう。さらに起業講習も実施すれば、自分で社会復帰できる環境をつくることも可能。企業側に警戒されて就職しにくいという悩みは格段に下がるはずだ。

少年院の職場環境も課題の一つだろう。私が訪問した少年院はインターネットにつながるパソコンは2台だけだった。少年院内での個人情報の漏洩が最大のリスクであるため、この環境になっているそうだ。

少年たちを守る施策である一方で、少年たちの社会復帰のために何が必要なのかをキャッチアップして行動できる環境が整っていない。職員の皆さんもエンジニアや起業家という人たちがいることはご存じだが、なるための手法についてはわからないのだと思う。

現在、全国で入院している人数は約2500人だそうだ。まずは個人的に起業家マインド、すなわち「できるできないでなく、やるかやらないかで変えられる」ということを、講演などを通じて伝えたいと考えている。そして、いずれは起業家育成プログラムや今回視察に訪れていた企業の方と連携して、エンジニア育成プログラムを提供したいと思う。

彼らが犯した罪は一人ひとりが重く受け止め、猛省することは大前提だ。しかし社会復帰が難しいという負の連鎖を生む環境を社会がつくってはいけない。これにはエンジニア育成や起業家育成支援が大きな役割を果たすと感じている。海外でも事例はいくつかあるようだが、日本でも負の連鎖を止める当たり前の手段としてエンジニアや起業家育成支援が貢献できるようにしていきたい。

[日経産業新聞2019年8月28日付]

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