子供の夏休みの過ごし方
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

2019/8/27付
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シリコンバレーでは新学期が始まっている。毎年不思議に思うのだが、夏休みも終盤にかかると、我が家を含め多くの子供たちが学校の開始を楽しみにしている。自分が子供の頃は1日も長く休暇が続いてほしいと願ったものだが、なぜこの違いが起きるのであろうか?

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

これは夏休みの過ごし方に大きな理由があるのではないかと考えている。日本であれば学童期であれ、青年期であれ夏期講習、夏休みの宿題や自由研究、部活、帰省とある程度パターンが決まっている。少なくとも私は塾と部活、休み直前の宿題パニックで、あっという間に夏が終わっていた。受験勉強という、人生に定期的に訪れる試練の仕組みから逃れられない日本人の宿命とも言えよう。

シリコンバレーの子供たちの夏はかなり多様性に富んでいる。自分の家族だけ見ても、長女は大学で学んだスキルを強化するために複数企業でインターン、長男は朝から晩までゴルフ漬け、次男は地域の貧困地区でのボランティア、三男は化学実験のキャンプ。近所の子供たちを見ていても、夏は勉強というよりも、新しい経験をするチャンス、自分の好きなことを磨く時間、知らない土地を訪れる機会、現実社会を学ぶきっかけと考えているようだ。

日本の学童期における学びは、いまだに学校のテストや受験で良い点を取るという意味合いが圧倒的に強い。米国では学力を測るのは全国統一テストしかないため、点数では個人の差がつきにくく、学校の成績や課外活動などの要素で進学が決まる。

個人として何に秀でているのか、何に興味を持っているのか、なぜ大学に行きたいのか、どうやって社会に貢献したいのか。学童期や青年期はそれを探るための探索の時間だ。

遠回りに見えるかもしれないが、学童期や青年期のボランティアといった社会に触れる機会は、自分の無知を知るきっかけにもなり、自然と学ぶ意欲につながっているようにも見える。自分が何に興味を持っているのかを知るきっかけにもなる。

小学生の時から社会活動を通じて、学ぶ意義を理解し、奉仕の精神を学び、自分の得意分野を見つけることの方が、テスト科目の良しあしで将来を決めることよりも、人間にとって自然なのは明らかだ。

日本では昨今、教育改革が話題になるが、我々社会人がもっと子供の教育に携わって良いのかもしれない。週末に自分の仕事の話を子供たちにすることくらいは、どの家庭でもできることだ。可能であれば、企業がもっとインターンの門戸を開放して、子供たちに大人の社会を見てもらい、学ぶ意義と楽しさを知るきっかけを作ってほしい。ボランティアの場も、もっと増やしたい。

これからは多様性の時代、得意なことで突き抜ける時代、好きなことを仕事にする時代。子供の頃の時間の過ごし方を少し工夫するだけでも、人生は多様にも、愉快にも、希望にあふれたものにすることができると思っている。

[日経産業新聞2019年8月27日付]

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