春秋

春秋
2019/8/22付
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大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹――。消費者庁の徳島県への全面移転は見送り、とのニュースを耳にして、古代ローマの詩人が残したという言葉が浮かんだ。安倍政権が掲げる地方創生の一環として浮上した構想だったが、看板倒れの印象である。あるいは竜頭蛇尾というべきか。

▼無理なことは最初からわかっていた、との声は多い。ごく一部の移転でお茶を濁すことになる、といった観測が早くから出ていたのも確かである。結果として、徳島には「新未来創造戦略本部」という立派な名前の研究拠点を新たに開設することで落ち着いた。焼け太ったようにもみえるのは、さすが霞が関といえようか。

▼さてこちらはどうだろう。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が、2024年にカリマンタン島(ボルネオ島)へ遷都する方針を打ち出した。首都ジャカルタとジャワ島への一極集中を是正する狙いという。随分と大胆な構想だが、1万3000を超える島々からなる広大な国土を抱えるだけに、納得できる気はする。

▼歴史を振り返れば遷都は珍しくない。記憶に新しいところでは、2006年のミャンマーや1997年のカザフスタン、91年のナイジェリアなどがある。もちろん容易な仕事ではなかろう。4月に再選を決めたジョコ大統領は10月に2期目に入る。どこかの国の地方創生とやらの轍(てつ)を踏まないか。いよいよ真価が問われる。

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