春秋

2019/8/16付
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長崎市の港を出るツアーの船は満席だった。海外からの観光客の姿が目立つ。向かう先は石炭の採掘で近代日本の発展を支え、世界遺産に登録された軍艦島。地中深くへ掘り進んだ坑内の環境は過酷で、つねに粉じんが舞うなか気温は40度、湿度は95%に上ったという。

▼日本人だけで250人が亡くなりました、と往時を知る高齢の男性ガイドが説明した。「日本人だけで」が気になり、ツアー後に話を聞いてみると「もちろん朝鮮半島からもたくさんの人がやって来て働き、そして亡くなった。でも最近は、そんな話をするなと食ってかかる人がいる。難しくなりました」と顔を曇らせた。

▼立場により異なる意見や主張をぶつけ合って議論するわけでもなく、基本的な事実を口にすることさえ許さない。そうした姿勢こそまさに歴史への冒涜(ぼうとく)のように思える。徴用工をめぐる問題などで日韓は対立を深め、いまや過去最悪といわれる状況のただ中にある。ガイドの皆さんの苦悩はより深まっているかもしれない。

▼「終戦の日」のきのう、東京では政府主催の戦没者追悼式が開かれた。令和の時代となり参列する遺族も世代交代が一段と進む。なにより式典に初めて臨まれた天皇陛下もまた戦後生まれの世代となった。直接知らないからこそ、お言葉にあったように先人のたゆみない努力と苦難の歩みに思いをいたし、平和を誓いたい。

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