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シードルで地方創生 出資者と消費者、共に巻き込め

奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

NIKKEI MJ

クラウドファンディングの普及とともに、成否の明暗が際立ってきている。特に地方創生に関わる事業の場合、補助金を使うのかクラウドファンディングで消費者を巻き込むのか、事業を立ち上げる当事者は悩むところだろう。

林檎学校醸造所は製造現場に出資者を招く

農業ベンチャーの成功例として注目されているのが、長野県飯綱町を拠点とする北信五岳シードルリーの「林檎学校醸造所」だ。実家がリンゴ農家を営む社長の小野司さんを中心に、地元の小学校の廃校を醸造所にしリンゴを原料としたシードルの生産に挑んでいる。

醸造所の設備を整えるのにCF信州というクラウドファンディングを利用した。CF信州は昨年開いたコンテストで上位5組に、調達したのと同額の補助金を付与した。林檎学校醸造所も200万円を集め、補助金も得た。非常に面白い資金調達の組み合わせで、他の地域でもまねしてほしいと思った。

シードルの完成を祝うパーティーを出資者と開いた(5月、東京・神田)

長野県創業・サービス産業振興室長の丸山祐子さんは「地方への移住や地方での起業には補助金が充実してきているが、なかなか周知に至らない。小野さんのような成功例が世に出てほしい」と話す。

小野さんたちは実は前年、別のクラウドファンディングでリンゴのカタログギフトを作ろうとしたが、資金を集めきれなかった。見た目は美しいカタログを計画したが、内容が分かりにくかった。

今回は返礼品を具体的なシードルやロゴ入りバッグに変更。生産への思いは写真をふんだんに使って訴えた。廃校活用という地方ならではのストーリーも入れ、東京と長野でシードル完成のパーティーへの参加権も用意した。小野さんは成功の鍵として「商品を具体的に見せる」「生産への思いを分かりやすく伝える」「地方創生への具体的な施策」「出資で得られる当事者性」を挙げる。

北信五岳シードルリー取締役で、夫の実家のリンゴ園を経営する高野珠美さんの言葉も印象的だ。「リンゴは手入れをしなければ害虫がつく。他の農家に迷惑をかけないために伐採するしかなくなる。義理の父たちの苦労を泡にしないために、どうにかリンゴの木を維持したい」

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

全国的なシードル人気も後押しする。生産者や輸入者も参加したイベントが東京ビッグサイトで7月に開かれ、にぎわった。日本酒や国産ワインの人気とも歩調を合わせ、「国産の原料だけで造れる酒」であるシードルの人気は本物となりつつあるようだ。

リンゴの種類や炭酸の強弱、酵母などにより味のバリエーションは広い。甘い先入観があるが辛口もそろう。幅広い料理に合い、女性を中心に支持されているようだ。

酒税法の改正で小規模で起業でき、農業ベンチャーとしてクラフトビールやワイナリーなど酒造りを選ぶ人たちも多い。ネットで直販する醸造所も多く、買いやすくなっている。ふるさと納税など起業を支援する仕組みもある。出資者と消費者をいかに巻き込めるかが、その後の成功への鍵になる。たくさんの祝杯があげられることを願う。

[日経MJ2019年8月16日付]

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