春秋

春秋
2019/8/12付
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近所のスーパーにお盆用品を取りそろえた一角があった。供物を載せる小さなござや、火をたくためのほうろく皿、線香にらくがん、ちょうちんなどなど。都会の片隅でも、亡くなった人を迎える昔ながらの風習が息づいている。どんな由来で、いつごろ始まったのか。

▼一説にはこうだ。シャカの弟子、目連は父母があの世の餓鬼道におちているのを知る。師の教えの通り、修行中の僧らに飲食を供すると、父母は餓鬼道を抜け出せた――。日本では7世紀の推古天皇のころに始まって、平安時代には貴族の間で定着したという。正月と並ぶ年中行事で、この時期に帰省する方も多いだろう。

▼墓に参ってご先祖と向き合い、食卓を囲み父母や親族らと語らう。だが、そんなひとときにも少子高齢化は、じわり影響を及ぼし始めたのかもしれない。最近「墓じまい」なる言葉を見聞きするようになった。管理しにくくなったケースで、墓石を片付けて更地にし、遺骨は別の納骨堂に移したり、散骨したりするものだ。

▼5年前には、若い女性の減少で都会も含め多くの自治体が消滅危機とのショッキングな調査もあった。「盆夕べ仏壇の灯に賑(にぎわ)へる」(大野林火)。墓も故郷もなくなれば、句のごとき情景は遠いものとなろう。社会が縮む中、店先にお盆の品が並ばない日が、やがて来るのだろうか。大事な何かが失われつつある気がする。

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