2019年9月18日(水)

地域スター生き生き発信
SmartTimes 社会起業大学学長 田中勇一氏

コラム(ビジネス)
2019/8/9付
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「日本の素晴らしさを世界に発信したい」。AWA-RE(徳島県美馬市)代表取締役の栄高志さんはこんな思いを胸に、徳島県西部の観光業を中心に地域活性化に取り組んでいる。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

もともとはモデル事務所に所属し、俳優活動を続けていた。きっかけは高校卒業後の米国留学だ。コミュニティーカレッジ(公立の2年制大学)で「シアターアーツ」という舞台芸術に最も興味を持った。その授業で一人芝居をやる機会があり英語で演じると、先生から「母国語でやってみて」と言われた。即興で日本語に訳して演じると、とてもほめられた。自分が生まれ持った言語や所作を素直に表現した方が良い演技ができると知った瞬間だ。

帰国後に俳優活動を開始するが仕事がなく、アルバイトで生計をたてていた。いつの日か芽が出ることを信じて10年以上続けるが、東日本大震災をきっかけに考え方が大きく変わる。

野望をもって挑んだ俳優業だが、結局は自分のためだけにしか演じていないのではないか。新たな道を模索し、起業の選択肢もあると思って社会起業大学の門をたたいた。

カリキュラムにあるスタディーツアーに参加し、岩手県陸前高田市のNPO法人で活躍する若者たちが生き生きと躍動し、地元の人たちから強く支持されている姿を見る。彼らはまさに地域という舞台で活躍するスターだった。俳優のあり方がわかった気がした。

その後、知人の勧めで徳島県西部の「にし阿波」という剣山・吉野川の観光圏域を紹介する講演会に参加する。このエリアが観光地として非常に高いポテンシャルを持っていることや、自治体が伝統農法である「傾斜地農耕システム」の世界農業遺産登録を目指していることを知った。

山間部の急傾斜地を生かしたこの農法は、にし阿波で400年以上も継承されているという。世界農業遺産は重要かつ伝統的な農水業を営む地域を国連食糧農業機関(FAO)が認定する制度だ。認められれば観光の呼び水にもなる。

圏域内のつるぎ町が「地域おこし隊」を募集しており、思わず手を挙げた。そこでPRに励んでいると、インバウンド効果で外国人観光客が増える。日本の田舎の原風景への関心が高まっていたのだ。徳島の壮大でのどかな風景や人情に触れながら、日本の良さを世界に発信する仕事に生きがいを感じるようになる。

メディアの取材対応はまさに天職だ。俳優業で鍛えたスキルが重宝され、地元の人気者になっていた。2018年3月に「にし阿波の傾斜地農耕システム」の世界農業遺産が認定されると、4月に仲間と株式会社AWA-REを立ち上げて社長に就任した。

夢を実現し、つるぎ町のスターとなった栄さんは役者であり、地域振興に尽力する公益資本主義の担い手でもある。

[日経産業新聞2019年8月9日付]

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