記憶の空間(8) 「斐伊川築地松」
東京大学教授 羽藤英二
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風景の中で生きる人々とともに、時にヤマタノオロチにたとえられる出雲地方の斐伊川(ひいかわ)の多くの支流は、古来、氾濫を繰り返してきた。暴れ川が作り出した肥沃な出雲平野で生きるためには、災害と向き合わざるを得ない。何を住民は考えたか? 低湿地を避けるように、自然堤防の微高地を巧みに読み込み、自らの意思で氾濫に備えたのではないか。
平野の土地は軟弱であったから、地盤を支えるために、スダジイなどの広葉樹...
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