2019年8月23日(金)

「いいね!」が消える? いじめや数競う心理 抑制へ
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2019/8/5付
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NIKKEI MJ

若者に人気の高いインスタグラムが、投稿に表示している「いいね!」マークとその数を非表示とする実験を7月に始めた。5月にカナダでテストを開始し、オーストラリアを経て日本を含む7か国で導入と着々と対象地域を広げており、「実験」と書いたが本気度は高い。自分の投稿への「いいね!」の数は確認できるが、他人の投稿に付く「いいね!」の数は見られない仕組みを、一部のユーザーに適用しているようだ。

一部のユーザーで「いいね!」が他人からは見えなくする実験が始まった

一部のユーザーで「いいね!」が他人からは見えなくする実験が始まった

「いいね!」はSNSの代名詞とも言える機能だ。コメントを書くよりも気軽に投稿者と交流ができるため広まった。どうして非表示にしようというのだろうか?

インスタグラムはフェイスブック傘下で成長を続け、世界で月間10億人以上、日本でも3千万人を超えるユーザーを誇る。絶好調のサービスだが、この数年間は利用法をめぐり大きな課題に直面するようにもなっている。

芸能人やアスリートなど著名なユーザーは巨大なフォロワー数を抱え、写真などの投稿には数十万を超える「いいね!」が付くこともまれではない。影響力を見込んで、製品やサービスを売り込みたい企業が金銭や便宜を提供するケースがたびたび指摘される。フォロワーや「いいね!」を売買する闇ビジネスも生み出されるようにもなった。

ゆがんだビジネスの温床となり、インフルエンサーである恋人を殺害しその写真を投稿するという陰惨な事件もごく最近に起きた。「いいね!」数やフォロワー数がユーザーの過度な射幸心をあおり、屈折した心理がいじめやヘイトなどの投稿やコメントを引き起こす、と指摘される。英王立公衆衛生協会は、青少年らの心理に最も悪影響をおよぼすSNSはインスタグラムだとの調査結果を、2年も前に発表している。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

「いいね!」非表示の実験発表で、インスタグラム幹部は「どれだけ『いいね!』が付くかというユーザーへのプレッシャーを取り除きたい」と狙いを明らかにしている。責任者のアダム・モセリ氏自らがいじめ対策の新機能を発表したのも、課題の大きさを示している。要するに、熱くなりすぎたユーザーのクールダウンを働きかけたのが、今回の実験の意味と言える。

こうした課題はインスタグラムに限ったものではない。ツイッターの創業者で最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー氏は4月のイベントで、ツイッターが虐待やハラスメント、情報操作、誤報に悩まされていることを率直に認めた。「いいね!」ボタンはあるべきではなかったとまで語ったのだ。

デジタル生活における精神的健康という課題は共通しており、これだけ材料がそろえばさっさと廃止しても良さそうなものだが、そうもいかない。「いいね!」廃止がSNSの利用意欲をどのくらい冷ましてしまうのか、広告を主体として成長してきた事業の業績にどう響くのかを考えると、慎重にならざるを得ない。だが、長くためらうと取り返しがつかない事件が起きないとも限らない。

数を競う心理を醸成して成長してきたSNS全体が、マイナス面を問われかねない段階にさしかかっている。

[日経MJ2019年8月5日付]

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