日本の職場は座り過ぎ ちょい運動で血行を改善

エアコンの利いた快適な職場は仕事が進み、気付くと座りっぱなしのこともある。だが、座りすぎは血行を悪くし、血栓や心臓疾患など深刻な病気につながりかねない。職場でできる簡単な運動で体を守ろう。
日本のオフィスワーカーは勤務中の7割を座って過ごしている。世界で最も長時間、座っているそうだ。
長時間連続して座っていると、血流不良をおこして代謝が落ちる。むくみや冷え症だけでなく、高血圧症や糖尿病、心筋梗塞など重篤な病気を引き起こす可能性が高まる。
座ること自体が悪いのではなく、連続してじっと座っていることが問題。そこで、オフィスにいながら、こまめに運動することで、血行を良くすることを心がけたい。
デスクワークに集中していると、なかなか運動できるものではない。それでも一番意識して実践してほしいのが、30分に1度立ち上がることだ。難しければ1時間に1回でも立つようにする。
次に心がけたいのが座っている時でもできる運動だ。職場環境によってはなかなか立てない状況もある。そうした時こそ、意識して座ったままで運動したい。
まずは、(1)つま先・かかと上げだ(写真参照)。片方のかかとと、もう一方のつま先を、交互に10回程度上げ下げする。続いて、(2)膝伸ばし。まず、片脚の膝を伸ばす。もう片方の太腿(もも)に力を入れて支えながら、伸ばした膝をゆっくり下ろす。左右交互に2~4回程度行う。椅子から腿が浮かないよう注意する。


さらに、余裕があれば(3)お尻上げも試したい。両脚を腰幅程度に開き足に重心を乗せ、ゆっくりお尻を浮かせる。下半身に力が入っていることを意識できれば十分だ。
これで一息ついたところで、(4)上体ひねり。椅子の背もたれに片手を添えて上半身をゆっくり左右に捻る。伸び上がるようにして、息を吐きながら捻るのがポイントだ。

コピー利用やトイレに行くために立ち上がった時は絶好の筋肉を動かすチャンス。まずは(5)背伸びで全身をほぐす。両手をコピー機や壁に添え、脚を開いて背伸びして、ふくらはぎの筋肉を動かす。
さらに、(6)脚横上げ運動で、お尻の筋肉をほぐす。この運動ではつま先が外に開くと腿の付け根に負担がかかるので、つま先をまっすぐ前に向けるのがポイントだ。

また、時間がゆるすなら、(7)左右に重心移動してみる。骨盤を正面に向けて行う。さらに、片膝を曲げて交互に引き上げる(8)腿上げ運動も取り入れたい。姿勢を保ち、膝の曲げ角度が、90度程度になるまでゆっくり上げ下ろす。

デスクワークに集中する時間が続いた時に効果的なのが(9)背筋伸ばしだ。椅子や壁に手を添え、脚を開いてお尻を後ろに引きながら背筋を伸ばす。自律神経を刺激し、作業効率を高めることができる。

ジムに通うなど定期的に運動している人でも「座りすぎ」リスクが相殺されるわけではない。職場でこまめに運動を行うことが欠かせない。意識的に筋肉に活動機会を与えることで、体の血流を保っていただきたい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2019年8月3日付]
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