2019年8月25日(日)

春秋

2019/7/20付
保存
共有
印刷
その他

「帰れ! 帰れ!」。その昔、血気さかんなデモ隊がこういう罵声を機動隊に浴びせかけていたものである。スポーツの試合なんぞでも、どうかすると「帰れ」コールが巻き起こった。人間は興奮すると、目の前のこころよく思わぬものにこの言葉を投げつけるらしい。

▼米国ではいま、大統領が民主党の非白人女性議員に対し「帰れ」をやっている。ソマリア生まれの議員らの名を挙げ、支持者を前に「もともといた国に帰ったらどうか」などと連発したのだ。トランプ氏のこの手の言動に慣れっこになってしまった米社会だが、こんどはさすがに反応が厳しい。下院は非難決議を採択した。

▼もっとも、大統領はそのくらい織り込み済みだといわれる。あえて支持者をあおり、再選への足固めをしたいようだ。会場は熱狂した人々による「センド・ハー・バック(彼女を送り返せ)」の大合唱に包まれた。ニュース映像からも異様さが伝わってくる。かくも差別意識に満ちた「帰れ!」が、かつてあっただろうか。

▼トランプ氏は支持者の高揚ぶりから距離を置くポーズを見せているという。しかし、映像を見れば一目瞭然。響きわたる「帰れ!」に耳を傾け、満足そうな様子の大統領が映っている。憎悪を募らせる為政者と、それに呼応する普通の人々。そして熱狂は高まっていく。なにも米国だけの問題ではあるまい。正気にかえれ。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。