デジタルサービスの国境 コンテンツ利用に壁つくるな
先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

コラム(ビジネス)
2019/7/22付
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NIKKEI MJ

日米を行き来していても把握できないのが、スマートフォンなどのデバイスとアプリのアカウント、使えるコンテンツの関係である。日本に帰国した際、あるいは米国に戻った際、いつものアプリを使おうとして壁にぶつかる。解決策を今も求めている。

アマゾンのキンドル端末では登録国を変える操作がしばしば必要になる

アマゾンのキンドル端末では登録国を変える操作がしばしば必要になる

早くに遭遇したのは、アマゾンのキンドル・ストアでの苦労だった。本を買うにはサイトの国にしたがってデバイスの登録国も変えなければならない。クリックを繰り返して登録国を日本から米国へ、その逆に変える。

私はアマゾンでは日米で同じユーザーネームを用い、国ごとにパスワードと登録クレジットカードを変えている。日米で購入した本は私のキンドルで共存している。非常にありがたいが、なぜこうなっているのかがわからない。

同じユーザーネームなので同一ユーザーだと判断されるのだろう。ならばデバイスもサイトの国ではなくユーザーにひも付けてくれればどんなに便利かと思う。

iPhoneでキンドル本を読む時も困った。米国で使うスマホに加えて日本のスマホにもキンドル・アプリをダウンロードしようとしたら、アップルIDを米国で登録しているため日本のアップストアは使えないと表示された。

日本で使うスマホでもアップストアが米国版に

日本で使うスマホでもアップストアが米国版に

それではと米国のアップストアからダウンロードしようとしたが、表示方法がわからず、日本用に別のアップルIDを作成した。ただIDを米国のものに戻すと、アップストアも米国版に変わった。

アプリの国設定自体は自在に変えられるが、IDがその国に属していない限り、表示はされてもダウンロードできない。このアプリは取り込むだけなら無料なので、フレキシブルにならないものか。ユーザーとIDを世界中で強く結びつけているのが、かえって使いづらい。

映画やビデオのストリーミングも複雑だ。コンテンツには地域制限がかかり、国外へ出ると見られなくなる。よく出張する知り合いは、レンタルしたDVDを持参したり、コンピューターにダウンロードしたりしている。ストリーミング時代に何とも古風だが、これが一番簡単なようだ。

デバイスとアカウントと国境の狭間にはまり込んだ体験もある。スマートディスプレーであるアマゾン・エコーショーの日本語非対応の初代機で日本のプライム・ビデオを見ようとしたら、トップページは表示されるが肝心のコンテンツが地域制限で見られない。日本にいて日本のアカウントを利用しているにもかかわらず、である。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

ユニバーサルな利用をうたうグーグルのスマホサービス「プロジェクト・ファイ」でも発見があった。世界中どこにいても追加料金不要で通話やデータ利用ができるが、日本にいるとバッテリーがどんどん減る。基地局を探すローミングのためではないかと推察する。バッテリーの減りを抑えるため機内モードに設定しなければならず、これではユニバーサルに使えない。

インターネットやスマホが普段はあまりに便利なので、国外での不便さはひどくこたえる。デバイスやアカウント管理、権利、課金などでネットには国境が引かれており、サービスによってまちまちなため一つずつ対処するほかない。そろそろ改良されてもいいのではと感じてならない。

[日経MJ2019年7月22日付]

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