ESG投資家への訴求 企業価値、対話通じ向上
Earth新潮流 日経ESG編集部 相馬隆宏

2019/7/19付
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企業が投資家との対話を通じて企業価値を高めていく「エンゲージメント」が活発になっている。日本IR協議会が4月に公表した調査によると、持続的成長を目的とした対話が1年前に比べて促進されたと感じている企業が6割超にのぼり、2015年比で2倍以上に増えた。

アサヒグループHDの小路明善社長(左)は機関投資家と積極的に対話している

アサヒグループHDの小路明善社長(左)は機関投資家と積極的に対話している

企業は投資家に自社の強みや成長力を訴えることで、正当な評価を得やすくなる。投資家から見れば、エンゲージメントによって投資先企業に経営課題の解決を促し、当該企業の競争力の向上やリスクの低減が期待できる。結果的に株価が上がる可能性が高まる。

6月にピークを迎えた今年の株主総会で、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する株主質問が相次いだのもエンゲージメントの1つの形といえる。

特に、企業価値に大きな影響を及ぼすESGなどの非財務情報については、対話を通じて双方の理解を深める必要がある。例えば、再生可能エネルギーの導入など気候変動対策はコストの上昇要因になるとみられがちだ。企業はそれがどう価値に結び付くのかを分かりやすく伝えなければ、投資家に評価されにくい。

エンゲージメントを強化することで企業価値を高めている1社が、アサヒグループホールディングスだ。同社は11年に持ち株会社制に移行した頃から、投資家と対話する機会を増やしてきた。株価は11年から8年間で3倍になり、17年半ばごろからTOPIX(東証株価指数)を上回るようになっている。

同社はエンゲージメントの一環として、経営に示唆を与えてくれる投資家に積極的に会いに行く。社長と投資家が実質的に一対一で会って話をすることも珍しくない。同席する同社執行役員IR部門ゼネラルマネジャーの石坂修氏は「一対一で会うと対話が深まる。社長が率先して出て対応している」と明かす。

投資家向けの説明会では、必ず社長によるヒアリングの時間を設ける。「当社の経営に対する不満や改善してほしい点を聞かせてください」。自社に今、何が欠けているのか、厳しい指摘も覚悟の上で、あえて尋ねる。投資家に指摘された点は改善し、次の対話の場でその結果を見せる。

実際にエンゲージメントによって企業価値を高めるには、従来の投資家向け広報(IR)活動の延長線で、企業と投資家が単に会って話すだけでは不十分だ。その場で上がった声を経営改革や情報開示の改善といった行動につなげてこそ、意味のある対話となる。

[日経産業新聞2019年7月19日付]

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