住まいのクールダウン 朝晩2回の換気を習慣づけ

ここ数年の猛暑はつらい。帰宅直後の家にこもった熱気に、疲れが倍増することも。家の中の熱は熱中症を引き起こす可能性もある。住まいのクールダウン法をおさらいしよう。
最も効果的に短時間で家の中の熱気を排除する方法は、換気だ。帰宅と同時にエアコンをつけて汗をかきながら部屋が冷えるのを待つ人がいるが、家の中より外のほうが涼しいときは自然換気が有効。
空気の通り道を確保するため、窓や換気扇、玄関ドアなど2カ所を開け、せめて10分間は窓を開けて換気しよう。外気のほうが涼しいときは熱気を外に送るよう扇風機を外に向けて回すと効果的だ。
そもそも家の中になぜ熱気がこもるのか。
屋外からは、太陽の直射日光が入ってくる。さらに道路の舗装面や建物の外壁の反射熱や、建物や壁などに蓄えられた放射熱もじわじわ伝わる。上下左右を住戸に囲まれた「中住戸」以外は、屋根や外壁、窓など全方向から熱が入り込んでくるイメージだ。
屋内にも熱を発する原因はある。冷蔵庫やオーブン、パソコン、炊飯器といった発熱する家電のほか、ガスコンロ、温水器や湯沸かし器など。住んでいる私たち自身もまた熱源のひとつ。
そこに、近年、住宅が断熱性、気密性が高くなっていることが重なる。「省エネルギー」をうたう住宅ほど熱は逃げにくく、こもりやすい。
カーテン・すだれで熱を遮断
こうしてため込んでしまう仕組みの住宅の熱は、意識的に排出していく必要がある。
まずは帰宅直後だけでなく、朝晩の自然換気を習慣づけよう。夕方から夜間、早朝にかけて、比較的昼間に比べ気温の低い時間帯は、屋外の涼気を家の中に取り入れ、こもった室内の空気を逃がす。
同時に「入ってくる」「発生する」熱をいかに減らすかも考えてみよう。

基本は住まいに当たる日差しをできるだけ遮ること。手近なところでは窓のカーテンを二重に引く、雨戸があるなら閉める、ない場合はガラス面に市販の日射遮断フィルム(赤外線カット効果をもつもの)を貼る手もある。
強く西日が当たる家は、窓の外によしずをかける、すだれを垂らす、オーニング(ひさし)をしつらえて陰を作るなどし、窓や壁面が熱を帯びるのを避けるようにしたい。
冬季の結露予防の応用で厚さ1センチメートル程度の「発泡スチロール板」を窓に貼るのも一案だ。ベランダやポーチも植物の水やりのタイミングで打ち水すると熱を帯びたコンクリートなどの温度が下がり、放射熱の影響を少し小さくすることができる。
また、熱を発生させない工夫としてはガスの火を使わない調理法がある。一般に都市ガスの炎の温度は1700~1900度にもなり、室温を上げることになる。55~80度で肉などを調理する低温調理器があるなら、夏こそ活用しよう。煮物や煮付けなど、材料に下味をつけて電子レンジ加熱で作れるレシピもある。
冷蔵庫など運転しつづける家電は、空気を留めてしまうとそこに熱気が集中する。発熱する家電がある台所では換気扇やサーキュレーター、扇風機を稼働させて、熱を帯びた空気をかき混ぜるといい。
エアコンの温度 我慢しすぎない
猛暑下ではエアコンをつけることが、家自体をクールダウンをすることになる。風向きを工夫すると壁や天井を冷やし、そこからの放射熱を減らす効果が期待できる。命に関わる熱中症は、半数近くが屋内で発生するという。
エアコンは必ずしも控えなくていい。設定温度で「28度という数値にとらわれないで」と話すのは、サイエンスライターで気象予報士の今井明子さんだ。
「漠然とエアコン設定温度だと捉えている人も多いが、28度は室内気温の目安」(今井さん)。天候や外気温や湿度、住まいの状況、また体調などと相談し「我慢しない」「冷やしすぎない」ように。住まいもクールダウンしていると考えればいい。
しかし、家庭用エアコンは、基本的に室外の新鮮な空気を取り込む構造にはなっていない。換気を怠ると、室内の二酸化炭素濃度が高まり、頭がぼうっとする症状が出ることもある。早朝や夕方の習慣だけでなく、適切なタイミングで自然換気し、外気を取り入れることを心がけよう。
(住生活ジャーナリスト 藤原 千秋)
[NIKKEIプラス1 2019年7月20日付]
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