人工肉に見る産学新時代
SmartTimes インターウォーズ社長 吉井信隆氏

コラム(ビジネス)
2019/7/15付
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ニューヨークナスダック市場でビヨンド・ミートが5月に上場した。2009年に米シリコンバレーで生まれた人工肉で知られるスタートアップ企業だ。株価は急騰し、市場の注目を集めた。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

植物性たんぱく質などを使った人工肉は世界で販売拡大が続き、25年までに市場規模が8000億円を超えるとされている。

ビヨンド・ミートが上場する1か月前、競合のインポッシブル・フーズがバーガーキングと提携し、ワッパーに人工肉を提供すると話題になった。

この企業はスタンフォード大学の生化学教授で遺伝学者のパトリック・ブラウン氏が創業した大学発スタートアップだ。

私はスタンフォード大でインポッシブル・フーズのハンバーガーを食べたことがあるが、見た目や味、匂いも本物の肉そっくりで、とても人工肉とは思えなかった。

すでにロサンゼルスやニューヨークのレストランで販売が始まっていて、行列ができるほどの人気だ。

抗生物質やコレステロール、人工調味料を使わず、ジャガイモやココナツオイルなどの素材で生産されている。牛肉と比べて使う水は75%少なく、温暖化ガスも87%減、土地は95%減で生産できる環境にやさしい食品だ。

この人工肉は肉特有の風味を引き出すことができるので、様々なメニューで利用できる。人が永きにわたって摂取してきた食肉をはるかに少ない資源で人々に提供する人工肉の出現は、世界の食流通を大きく変えるかもしれない。

アメリカでのスタートアップ企業の多くは、大学から生まれ育っている。その役割を技術移転機関(TLO)が担っていることが多い。大学の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する組織のことだ。

米国では1930年ごろから、技術移転の歴史がある。

近年ではスタンフォード大からグーグルが、ハーバード大からフェイスブックが生まれたように、大学から多くの事業が創生されている。つまり米国では、大学がイノベーションのプラットホームになっているわけだ。

日本でも最近ではユーグレナやペプチドリームサイバーダインをはじめとする大学発スタートアップ企業が相次いで上場し、時価総額が数千億となって話題を呼んでいる。

これまで日本は大学での研究成果を起業につなげる仕組みが弱かったが、大学発スタートアップ企業の環境が好転している。

知識社会が進化することで、産業の構造は変わった。富の源泉が大学で研究成果をあげた知識を活用した企業に移り、イノベーションの主役になり始めた。

産学の連携が産業の枠組みを根底から変え、新たな経済の秩序をつくる時代が到来したといえる。

[日経産業新聞2019年7月15日付]

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